実務法曹の教育について

コメント欄での指摘もありましたが、一番難しいのは、法廷活動の教育ではないかと思います。
私の場合、若手検事の時は、立ち会っている部の裁判官や、書記官、速記官から、いろいろとアドバイスを受けることがあり、非常に参考になり、ありがたかったという記憶があります。
今でもそうなのですが、昔から、やや早口な傾向があり、書記官や速記官からは、もっとゆっくり尋問してはどうですか、といったことを何度か言われました。それで、自分でも反省して、意図的にゆっくりしゃべったり、抑揚をつけてメリハリを効かせるようにしたり、といったことを自分なりに工夫したりもしました。
反対側から見ていると、刑事公判での弁護士は、中には法廷活動が上手な人もいましたが、そういう人は少数派で、信じられないくらいダラダラとしゃべっていたり、メモも速記もとるのが困難な意味不明なことを連発する人が多いのには驚かされました。同じ事務所のボス弁、イソ弁とか、あるいは先輩、後輩といった間柄であれば、注意することもあるかもしれませんが、法廷に共同で出てくることは、意外と少ないと思われますし、裁判所が弁護士の日常の法廷活動にアドバイスする、ということは、よほど目に余ることでもない限り考えにくいので、おかしな癖がついてしまっても、なかなか改まらないのだろうと思っていましたし、今でもそのように感じています。
教育の重要性は言うまでもありませんが、各自が、自分の法廷活動を謙虚に反省して、できるだけ他人の法廷活動も見て参考にしつつ、自ら改めるべき点は改める、ということを日々行うことが必要でしょう。
弁護士になって、刑事公判へ行くと、今度は反対側から検察官の法廷活動を見ることになりましたが、「ああいう尋問はかえって逆効果だな」とか、「そういう枝葉末節にこだわらずに、もっと重要なことを聞けば良いのに」などと感じることも少なくなく、参考になります。
もう、二度と検察官として仕事をすることはありませんが、再度、検察官をやってみると、こういった弁護士経験も生かしつつ、以前よりも良い仕事ができる場合があるのかもしれません。