弁護士の公益活動

国選弁護もそうですが、弁護士の仕事の中で、公益に関わる仕事、というものがあります。意外と知られていませんが、かなり広範囲に及んでいるといっても良いでしょう。多重債務者の救済とか、各種の消費者問題、犯罪被害者の支援、などなど、いろいろです。お金になるか、と言われると、時と場合にもよりますが、普通は、お金にはならない仕事でしょう。
では、多くの弁護士が、そういったことは一切しないか、と言うと、これも人それぞれですが、世間の一般的なイメージよりも、はるかに、そういった仕事に関わっている弁護士が多いのが実態です。
テレビのバラエティー番組、2時間ドラマ、映画、小説、雑誌などだけで、弁護士のイメージを思い描いて、お金にならないことは手がけない人々、と思い込むのは自由ですが、実態は異なっているので、要注意でしょう。
ただ、こういった現状は、今後、変わって行くと思います。例えば、国選弁護の場合、現状は仕事に見合った報酬、には全然なっていませんが、他の分野で利益を出していることを当然の前提にして、一種のボランティアの要素を多分に含んで報酬額が決められています。その意味で、国が国選を担当する弁護士に甘えていると言っても過言ではないと思いますし、弁護士の側も、報酬が安い安いと文句は言いつつ、公益性を優先して受けてきています。中にはいい加減な人もいますが、多くの人は、報酬が安くても、やるべきことはやっており、それで、日本の刑事司法は支えられてきています。
今後、弁護士の数が激増し、競争が激しくなって、弁護士1人当たりの売上が減少(おそらく大幅に)すれば、上記のような余裕はなくなるでしょう。したがって、公設弁護人、といった制度を設けた場合、相応の報酬を出さねばならず、その負担は、最終的には国民全体に及ぶことにならざるを得ないでしょう。
要するに、従来は、お金になる民事、を手掛けながら、低廉な報酬で国選弁護などの公益活動を引き受ける、という構造だったものが、今後は、公益活動とはいえ相応の報酬をもらう、と言う形になって行くはずです。
こういった形で、国民の新たな負担が広く全体に及ぶ、と言うことが、果たして望ましいことなのかは議論があると思いますが、現実問題としては、こうならざるをえないと私は見ています。