保釈率の上昇 「人質司法」見直しを進めたい

http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20150222-567-OYT1T50124.html

長期の拘束が、自白を迫る圧力となり、 冤罪 えんざいの一因になってきたことを忘れてはならない。
法務省は、今国会に提出する刑事訴訟法改正案で、裁判官が保釈の是非を判断する際に留意すべき点を明文化する方針だ。
あいまいに運用される余地を残さないためにも、国民が理解しやすい具体的なルールを示すことが肝要である。

私は、法曹になった当初は検察庁にいてそこで11年5か月、その後、弁護士になって現在に至るまで約14年半経過していて、反対の立場から保釈制度を見ていますが、従来の検察庁、裁判所の、保釈の可否を決する上でよく問題になる「罪証隠滅の恐れ」の判断は、過度に神経質になっていて相当でない場合が少なくない、という印象を率直に持っています。「あり得る」ことと「その蓋然性がある」ことが混同されて、しかも、「あり得る」ことと「あり得ないわけではない」ことも混同されてしまい、「あり得ないわけではない」程度の極めて希薄な罪証隠滅可能性をもって保釈不許可になりやすい、そういう流れで従来は来てしまっていたということが言えると思います。
ごく例外的な、組織犯罪のようなタイプの事件を除き、罪証隠滅というものはそうそうできるものではなく、実際に起きてしまったら厳格な運用で保釈取消、保釈保証金没取を行うことで(遠隔操作事件ではそのようにされました)、罪証隠滅自体は抑止されるでしょう。あまり、その点に神経質になりすぎて、刑事司法の在り方が歪んでしまっているところは、是正の動きもあるとはいえ、大きく改善されなければならないと思います。
今後の改正、改善に、私としても注目しつつ期待したいところです。

2015年02月22日のツイート

「検索表示はヤフーの意思」 名前で逮捕記事 違法性は認めず

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015021902000119.html

金子順一裁判長は、検索結果で示される各サイトの内容を抜粋した部分(スニペット)は「ヤフーの意思で表示された」と認めた。その上で、男性の名誉を損なう表示だが、逮捕から長い期間が過ぎていないことなどから「記事への社会的関心は高く、公共の利害に関わる」として、違法性は否定した。
判決は、ヤフー側の「機械的、自動的に表示しただけで自らの表現行為ではない」との主張を退けており、名誉毀損やプライバシーの侵害などで、検索サイトの責任を認める可能性を示した。

金子裁判長は、表示方法について「アドレスのみにとどめるか、サイト内容の一部も表示するかなどを決め、システムを採用したのはヤフーだ」と指摘。スニペット部分の性格を「サイトの特定というだけでなく、記載に即した事実があるとの印象を広く閲覧者に与える」と判断した。

この問題を考えるにあたっては、検索結果の表示そのものに着眼することと、上記のような「抜粋」部分に着眼するという、大別して2つの方法があると思うのですが、後者のほうが、従来の名誉毀損に関する考え方をあてはめやすい面があるのではないかと思います。
表示自体は機械的、自動的に表示されても、そのようなシステムを設定、運営しているのが人の意思に基づくものであれば、それはその人の表現行為と見られるというのは、ごく常識的な判断でしょう。こういった考え方が定着すれば、少なくとも、上記のような抜粋部分については、内容に応じて削除が認められやすくなるのではないかと思われます。今後のこの問題を考える上で、重要な裁判例になる可能性があると思います。

令状なし逮捕で賠償命令=都に40万円、現行犯認めず―東京地裁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150223-00000138-jij-soci

村上裁判長は、警察署に向かうパトカー内で男性は身柄拘束をされておらず、凶器などの身体検査もなかったことから現行犯逮捕ではなかったと指摘。「令状なく逮捕したことは違法。現行犯となるよう書類に事実と異なる記載をしており、看過できない」と述べた。

男性が駆け付けた警察官の求めに応じて警視庁小金井署に行くと、約3時間後に取調室で、既に傷害容疑の現行犯で逮捕されていると告げられた。

前に、ブログか何かで書いたことがあるのですが、新任検事の時に、交番勤務かパトカーに乗っている警察官を参考人で呼んで事情聴取していた際、私が新任検事で物を知らないと思ってあきれたのか、その警察官が、「私たちは相手を取り押さえるのが仕事で、それを、捜査員が、後から、これは現行犯逮捕だ、これは任意だ、といった評価をして書類をうまくまとめてくれるものなんですよ」といった話をしていて、その時は随分と乱暴なことを言うものだと驚いたのですが、その後、いろいろと経験を積む中で、確かにそういう側面はあるのだろうなと感じるようになりました。検察庁では、かなり早い時期に、現行犯逮捕は、無令状で、しかも、緊急逮捕のように裁判官が事後にチェックして令状を出すといったプロセスも踏んでいないから要注意、ということを教えられ、上記の警察官の話も思い出しながら、現行犯逮捕事案では、送致されてくると現行犯人逮捕手続書などを、鵜呑みにしないように注意しながら慎重に読んでいたことが思い出されます。
そういったことを、上記の記事を読み、いろいろと思い出しました。