「50発ぐらい殴った」殺人容疑で逮捕の交際相手を傷害致死罪で起訴 大阪・福島の女性変死 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160901-00000559-san-soci

地検は「殺意の立証は困難と判断した」としている。

被告は逮捕当初、「会う約束を破られたので腹が立ち、50発ぐらい殴った」と供述する一方、殺意は否認していた。

こういった、故意、目的といった主観的要素の立証は、人の心の中を切り開いて見るわけにもいきませんから、特に否認事件ではなかなか難しいもので、事実認定の分野では古くから議論されてきたところです。現在の通説、実務では、例えば殺意の立証にあたっては、使用した凶器の有無や手段、方法、攻撃した身体の部位や執拗性、犯行後の経緯(例えば、相手の具合が悪くなり慌てて救命措置を講じたような場合は殺意の認定上は消極方向に働きます)等の事情を総合して検討するという手法に依っています。
上記の事件でも、証拠関係がよくわかりませんが、そこは慎重に検討された上での傷害致死罪による起訴だろうと思います。ただ、あくまで一般論ですが、そういった点に微妙さがある場合に、より重い(例えば傷害致死罪ではなく殺人罪)犯罪が認定される蓋然性があれば、検察庁内のみでの判断で認定を落としてしまうのではなく、裁判所、裁判員の判断を仰ぐという起訴も、あって良い、あるべきではないかということも感じます。検察の起訴の在り方という、古くて新しい、微妙かつ難しい問題でしょう。