『家栽の人』原作者・毛利甚八さん死去 絶筆の“君への遺言”とは?

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バブルに浮かれる日本社会にメスを入れる作品として話題になり、法曹界にも多くのファンを獲得した。しかし、大ヒットの陰で、毛利さんは「こんな判事がいるはずない。自分は現実からかけ離れた虚像を書いている」と悩み、苦しんでいたという。

徳島地検に在籍していた平成2年から平成5年当時に、よく読んでいた記憶があります。数年前、何かのシンポジウムで毛利さんと一緒になる機会があり、ちょっとお話もしましたが、抱いていたイメージ通りの、誠実さがにじみ出ている感じが印象的でした。にこにこと笑っておられた姿が、いまでもうっすらと思い浮かびます。
現実の事件というものは、なかなかヒューマンには進んだり処理されたりしないもので、判例や実務上の基準に照らして無機質に進み処理されがちです。そういう現実に対するアンチテーゼとして、「家栽の人」は、今後も読み継がれていくと思いますし、その輝き、存在価値は長く失われることがないでしょう。