<北海道警>地元CATVの映像押収 成人式妨害捜査で

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140218-00000135-mai-soci

市によると、成人式は1月12日にあった。米沢則寿市長のあいさつの中、十数人の男性が市職員の制止を振り切って壇上に上がり大声を上げるなどし、式典が約1分半中断した。
市は被害届を出さない方針を示したが、帯広署は同容疑で捜査を開始。式典を生中継しニュースでも報じたOCTVに映像の任意提出を求めたが、応じなかったため押収した。
OCTVによると、押収されたのは生中継映像を記録した1時間15分のDVD1枚。同社は「報道目的で撮影したもので捜査に使用されるのは遺憾。令状が発行された以上、応じざるを得ないと判断した。既に放送されており、報道の自由は侵されないと受け止めている」としている。

警察は、被害届を出したいと希望し、出しても捜査はなかなか進捗しないのが普通なので、帯広の警察は日本の警察の枠をはみ出した熱心な警察なのかもしれませんね。
それはともかく、先日、特定秘密保護法の関係で、参議院議員会館で講演した際、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20131202#p2

法案に関する政府答弁では、報道機関への捜索・差押が行われないかのようなものもあったが、従来の判例では、報道機関への捜索・差押は表現の自由(取材の自由)との関係から慎重に行われるべきとしつつも、捜索・差押自体は許容している。
例えば、最決平成2年7月9日(TBSビデオテープ押収事件)で、最高裁は次のように述べている。

差押の可否を決するに当たっては、捜査の対象である犯罪の性質、内容、軽重等及び差し押さえるべき取材結果の証拠としての価値、ひいては適正迅速な捜査を遂げるための必要性と、取材結果を証拠として押収されることによって報道機関の報道の自由が妨げられる程度及び将来の取材の自由が受ける影響その他諸般の事情を比較衡量すべきである。

その背景には、我が国の刑事訴訟法で、報道機関、報道関係者に、情報源(ニュースソース)に関する押収拒絶権や証言拒絶権(弁護士等の一定の職にある者やあった者には認められている)が認められていない、という問題がある。
したがって、捜査の中で、報道機関や報道関係者(自宅等)への捜索・差押は十分に行われる可能性があるし、情報源を明らかにするため、報道関係者が被疑者ではなく参考人であっても取調べが要請されることも十分あり得る。

といったことも述べましたが、「市長のあいさつの中、十数人の男性が市職員の制止を振り切って壇上に上がり大声を上げるなどし、式典が約1分半中断した。」という程度の(その場にいた人々が迷惑したことはわかりますが)、被害届も出ていない事件でも、こうして簡単にマスターの映像記録が押収されてしまう、ということは、記憶しておいた方がよいでしょう。
なお、上記のケーブルテレビ会社のコメントで、既に放送されており、報道の自由は侵されないと受け止めている、とありますが、押収で既に放送された分の報道の自由が侵されないのは当たり前のことで、問題は、最高裁が言っているような、「将来の取材の自由が受ける影響」でしょう。取材により得られた情報が簡単に捜査当局へ流れてしまうことになれば、多くの人が取材を受けることに消極的になり報道の自由、取材の自由が制約されかねません。そこはよく考えておく必要があります。