2ちゃんねる関連会社捜索 PC操作事件、情報開示せず

http://digital.asahi.com/articles/TKY201211260324.html

遠隔操作されたパソコンからの犯罪予告事件で、警視庁などの合同捜査本部は26日、ネット掲示板2ちゃんねる」のサーバーを管理する札幌市内の会社を威力業務妨害容疑で家宅捜索した。犯人からとみられる書き込みについて通信履歴の開示を求めたが、2ちゃんねる側が応じなかったためだという。
捜査関係者によると、捜査本部が開示を求めていたのは、遠隔操作ウイルスを仕込んだ無料ソフトのダウンロード先に閲覧者を誘導するため、8月28日に書き込まれた通信の履歴。

上記の情報は、以前から、真犯人を特定するための有力な情報ではないかと報道もされていたもので、捜査当局としても、数少ない、有力な証拠として、徹底的にこだわらざるをえない、ということなのでしょう。捜査としては、こういう流れになるのはやむを得ない、という気はします。
最近、刑事訴訟法の改正があって、218条2項で、

差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。

という、「リモートアクセス」と呼ばれる方法が可能になっています。2ちゃんねるのログについて、どういった管理になっているのかわかりませんが、上記の捜索先にある電子計算機が差し押さえるべきものとされていて(それは確実でしょう)、その電子計算機と、「電気通信回線で接続している記録媒体」であり、かつ、「当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるもの」が存在すれば(要するにどこかで保管されているログがあり、今回の捜索先にある電子計算機でアクセスできる)、「その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえる」ということができる可能性があります。捜索の結果、何がどこまでできたのかわかりませんが、警察は、リモートアクセスを念頭に置いて捜索に入っているでしょう。

2012年11月25日のツイート

大崎事件再審請求、証拠開示命じず判断か 鹿児島地裁

http://www.nikkei.com/article/DGXNASJC25007_V21C12A1ACY000/

大崎事件の弁護側も積極的に開示を求めた。しかし、中牟田裁判長は今年10月、鹿児島地検が作成した未開示証拠のリストについて「開示を求めるつもりはない」と述べ、近く決定を出すことを示唆した。
森雅美弁護団長は「リストぐらいなぜ出させないのか」と憤りを隠さない。
ただ、再審請求での証拠開示については法規定がなく、実質的に裁判所の裁量に委ねられている現実がある。

正に、再審請求段階の証拠開示について、実質的にも形式的にも、「裁判所の裁量に委ねられている現実」こそが問題でしょうね。証拠開示というものは、開示されてはじめて、開示された側に、そこに目指すものがあるかどうかがわかるものです。裁判所だけが見て、これは審理の行方に影響しないだろうと判断しても、当事者が見れば、別の判断や立証があり得る、そういう証拠が埋もれたままで終わらないためにこそ、予め、開示についての適正、公平で実効性のあるルールを定めておいて、そのルールに則って手続が進められる必要があります。
そういったルールが法定されない限り、今後も、上記のような、もやもやとした不透明な事態は頻発し、発見されるべき真実が闇に埋もれてしまう恐れがあり、そういった事態が繰り返されれば、国民の刑事司法に対する不信感が増大するのは確実でしょう。刑事訴訟法の改正により、再審請求段階だけでなく、公判の全段階における証拠開示の在り方を抜本的に見直し、捜査機関が持つ証拠を、被告人、弁護人が大幅に活用できるように制度が改められる必要があると思います。日弁連も、今後、成立する新政権に対して、そういった点も含めた刑事司法の大改革を積極的に提案し、求めて行くべきでしょう。