自衛権・再考

以前、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20130821#1377093458

で、憲法9条の解釈、自衛権についてコメントしたことがありましたが、自衛権についての考え方に、何となくもやもやしたものを感じ、

日本国憲法論 (法学叢書 7)

日本国憲法論 (法学叢書 7)

の該当箇所を読みながら考えてみました。この本は、私が司法試験当時に読んでいた本がさらに大幅に加筆されたもので、根幹部分は読みなれていて、憲法の問題を考える際には引っ張り出しては読んでいます。元の本は、何度も繰り返し読んで本全体がばらばらになりかけたので、裁断して自炊し、今でも読めるようにしてあります。
上記のエントリーでは、

このように考えた場合も、前内閣法制局長官が指摘するように、自国が攻撃されていない、その意味での自衛権を発動する状況にないという集団的自衛権は、日本国が保有してはいても、日本国憲法がおよそその行使を是認していないもの、と言うしかないでしょう。

とコメントしましたが、これは今でもその通りだと考えています。ただ、日本国は国家として、固有の権利として「自衛権」を保有し、そこでは集団的自衛権も含まれるというのは、政府も、かねてから認めてきたものです。問題は、

・自国が攻撃されておらず、(密接に関係がある)他の国が他国から攻撃されたときに、ともに戦うという意味での集団的自衛権の発動←行使できない
・自国が攻撃され、これに対して反撃する個別的自衛権の発動←行使できる

の間に、自衛権を発動できる余地はないのか、ということでしょう。憲法上は「自衛権」としかないわけですから、集団的自衛権保有しているが行使できない、という従来の議論をさらに踏み込んで、行使できる自衛権についての考え方が、従来は狭すぎたのではないか、他に自衛権を行使できる場面はないかということを解釈として検討する必要があります。現実的には、上記のエントリーで述べたような憲法解釈を大前提としつつ、

・他国(米国)と共同により我が国の安全保障が行われている状況の下、米国に対する攻撃が行われた場合に、それを我が国に対する攻撃とみなすべき状況があれば、自衛権に基づき反撃できる

ということになるでしょう。日米安全保障体制(外国に対して日本の安全保障への協力を求めることは憲法9条に反しないことは最高裁も認めています)の下、自衛権の在り方を、より実質的に考えることは、解釈上、可能です。
従来、個別的自衛権の「個別」という言葉に過度に引きずられてきたきらいがありましたが、他国と共同し他国の協力を得て日本を防衛する状況の中で、他国と日本を一体として捉え、そこに攻撃を受ける状況が発生すれば、自衛権の行使が可能であり、カテゴリーとして、それは個別的自衛権の範囲内と思います。従来、こういう場面では個別的自衛権だけでは対応できないと言われてきたことは、個別的自衛権をより実質化した解釈によりカバーできると私は考えます。
こうして見ると、憲法9条は、その根幹部分において、日本が自衛権に基づき他国とも共同しその国土を防衛しつつ、日本が他国の戦争に引きずり込まれることを回避させる、極めて強固なものがあることを改めて感じさせられます。