http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016060102000136.html
口利きでこの法律違反に問えるのは、「権限に基づく影響力の行使」があって、公務員に職務上の行為をあっせんしたケースである。その「影響力の行使」を具体的に立証する必要がある。これが壁になった可能性がある。
この点については、以前、
あっせん利得処罰法の「権限に基づく影響力を行使して」の解釈
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20160128#p2
でコメントしたことがありますが、「法令に基づく職務権限の遂行に当たって当然に随伴する事実上の職務行為から生じる影響力を含む」と解されているものの、証拠に基づく認定としては、具体的な言動、働きかけからそのような行為であったと評価できるものである必要がある、というのが従来の取り扱いで、ごく穏やかに話していて「影響力行使」が形を伴って出てこなければ、認定は難しくなりがちだろうと思います。おそらく、そういう限界を超えて犯罪事実として認定できるという域にまでは達していないというのが東京地検の判断だったのでしょう。
ただ、政治家に頼み事をして金品を提供する人は、正に、その政治家が持つ「権限に基づく影響力を行使」してほしいと思うからこそ頼み事をするものであり、頼まれた政治家も、その政治家や秘書が口を利いて働きかける相手のURのような組織、公務員等も、「政治家の先生」という、正に権限に基づく影響力を常に意識しつつ対応するものです。その意味では、実態を的確に捉えて適切な処罰が難しい「ザル法」かしていると言われても仕方がない面はあり、この事件で改めてそこが浮き彫りになったと言えるように思います。
もちろん、処罰範囲を広げすぎることで政治活動の自由が制約されるというデメリットも生じてくる面があり、ザル法のママにはせず、かといって政治活動の自由も過度に制約しない、適切な線引、処罰範囲の確定ということを、今後、積極的に議論し必要な改正を行う、その契機とすべきなのかもしれません。