PC遠隔操作事件 もう「足利」を忘れたのか

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121106-00000117-san-soci

悲劇は再発した。何者かがPCにウイルス感染させて遠隔操作したのを見破れず、犯罪予告を書き込んだ容疑で大阪、三重、警視庁、神奈川の4都府県警・検察が4人もの男性を誤認逮捕・起訴してしまったのだ。

摘発こそ最大の防犯なのだ。遠隔操作も同様。あらゆる犯罪のインフラになりかねないPC遠隔操作に対し、警察・検察は防圧する捜査力と態勢を整えなければいけない。

私は、今ではしがない中年の弁護士に成り果てていますが、かつては検察庁で、新進気鋭の検事として、捜査、公判に従事していた時期がありました。捜査を担当していて、特に精神的にきつかったのは、犯人性自体を否認している被疑者を起訴しようとする時で、各種証拠から犯人であることは間違いないと確信が持てる状態であっても、もしかしたら間違っているかもしれない、という一抹の不安が頭をもたげて、立会事務官が帰った後の、夜になり静まり返った検察庁内の自室で1人座って、起訴状に署名しようとしながら気持ちが逡巡し、ペンを手に取ったり机の上に置いたりしつつ、記録を読み直したり取調べ時の被疑者の言動を思い起こしたりしながら、悶々とした時間を過ごしていた時のことが思い出されます。
犯人性の認定を誤り無実の人を逮捕、起訴し有罪にする、ということは、絶対にあってはならないことであり、そういったあってはならないことを防止するためには、可能な、あらゆる方策が講じられなければなりません。警察、検察当局が、一連の遠隔操作事件から、貴重な、多くの教訓を導き出して、今後の改革や事件解決へと活かすことを強く望みます。
多くの捜査員、検察官が、一連の事件の事後処理のため動き、また、国民から巻き起こる厳しい批判に切ない思いをしている関係者もいると思いますが、事件での失敗は事件で返すしかない、そうすることで国民に信頼される捜査機関にならなければならない、ということを肝に銘じてほしいという気がします。私は、しがない弁護士として、草葉の陰から静かに見守っています。