戦いのルール

戦い、というものは、共通のルールを決めてそのルールの範囲内で行われるとは限らない。昔、学校の教科書に出ていた蒙古襲来絵詞の一部に、元寇の際、単騎の鎌倉武士が、複数の蒙古兵に取り囲まれて矢で射られている場面が出ていたが、鎌倉武士のルールでは、単騎対単騎で、相互に名乗り合った上で(「やーやー、我こそは・・・」)「正々堂々と」戦うべきものが、そういうルールとは無関係の蒙古兵にはまったく通用せず、散々やられてしまった、ということである(単騎で出ていって名乗ったところ、蒙古兵にどっと笑われて、思い切り矢が飛んできた、という話をどこかで読んだ記憶がある)。
告発サイトについても、似たところがある。確かに、正々堂々と名乗った上で告発する、というのは、一つの立派な態度である。しかし、違法不当な意図がなくても、様々な理由で、「名乗れない」人はいると思うし、「名乗れないから言っていることもデタラメだ」とも、必ずしも言い切れない。既に指摘したように、一種の非正規戦、ゲリラ戦の戦士であるから、そういう人々に、正規戦のルールをいくら説いても、そもそも考え方が違うので、通じないのではないかと思う。
では、どうすべきか?というところが問われるわけであるが、世の中に不平不満の種は無数に転がっているので、誰かが誰かを告発したいという衝動をゼロにはできないし、インターネットという、誰でも気軽に情報が発信できるツールができた以上、誰かを告発したい人に使うなというわけにも行かないし、トレーサビリティと言っても、日本国内ですら匿名性が完全に保障されたPHSデータ通信サービスがあるくらいなのに・・・、と、考えるだけで頭が痛くなってくる、それだけ難しい問題なのである。私には、一刀両断で、「これなら大丈夫!」という名案は浮かばない。