- 作者: 松井浩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/04/27
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榎本喜八、という選手については、凄いバッターだった、という、うっすらとしたイメージがある程度でしたが、今春に訃報に接し、現役時代の活躍ぶりも報じられていて、興味を感じ、この本をたまたま見つけて読んでみました。この種の野球物としては、かつて読んだ、広島カープの木庭スカウトを描いた
- 作者: 後藤正治
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/05
- メディア: 文庫
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と匹敵するおもしろさでした。
私が野球に打ち込んでいたのは、中学、高校当時の昭和50年代でしたが、当時は、まだ、野球を精神論的、形而上的に捉える傾向が残っていて、例えば、広島で、高校野球で有名な広島商業では、選手に真剣の上を素足で渡らせたりして(切れてしまうのではないかと思うのですが精神を統一すると切れないそうです、絶対に真似しないでください)「精神野球」を追求していました。榎本氏の野球人生も、合気道などに傾倒して、そうした精神論的、形而上的な傾向が顕著であったことが本書では紹介されていて、古い、野球への取り組み方ということが懐かしく感じられました。著者は、生前の榎本氏本人やかつての名選手たちに、丁寧に取材をしてまわったようで、その成果が取り入れられていることが、本書の厚みを増していると感じました。
結局、精神論的、形而上的なものに傾斜したことが、選手生活の晩年には「奇行」を繰り返す、といったことになってしまい、念願していた指導者の地位も得られず、引退後は世に出ることがないまま、逝去するに至りましたが、かつて対戦した投手が口をそろえて高く評価していたその傑出した能力や実績は、今後も、日本野球界で長く語り伝えられるべきものでしょう。本書は、そういった榎本氏の姿を後世に伝える、意義、価値の高いものだと思います。戦後、昭和40年代までのプロ野球の様子がリアルに描かれてもいて、その点でもおもしろい一冊でもあります。