危険運転致死傷罪を巡る事実認定及び量刑の問題について

最近、福岡高裁で原判決が破棄され、懲役20年が宣告された事件について、原判決後に、

福岡市の3人死亡事故で元福岡市職員に懲役7年6月
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20080108#1199757376

とコメントしたことがあります。
懲役20年は重すぎるのではないかという意見もあるようですが、危険運転致死傷罪は、「危険運転」というものを、傷害致死罪における「傷害」行為と同視し、自らが故意により危険な行為を行った結果、重い結果が生じた場合に、傷害致死罪と同程度の重い刑を科そうといった考え方に基づいて立法化されていて、従来の、過失により事故を起こしてしまった、というレベルとは、かなり異質な、異なるステージの犯罪である、ということは明確に認識す必要があるでしょう。
ただ、危険運転致死傷罪の成否については、福岡の事件でも、また、上記のエントリーで取り上げた名古屋の事件でも、地裁と高裁の判断が食い違っていて、事実認定が微妙な事案では、裁判官によっても評価が分かれてしまうという、それだけ難しい構成要件になっている面があります。認定されるかされないかによって、宣告される刑には大きな開きが出ることになり、国民の目から見て、微妙な事案ではその差はほとんどなく、認定されなかったことと結果の重大性とのアンバランス(典型的なのは福岡の事件で、3名死亡という重大な結果でしたが地裁判決では懲役7年6月と、高裁判決の半分未満でした)ということが感じられる度合いが大きいほど、刑事司法に対する不信感も募るという、難しい問題も生じます。
やはり、上記のエントリーでもコメントしたように、構成要件から微妙な評価の差異により結論が分かれ刑に著しく差が出てしまうような要素はできるだけ排除し、客観的な要件を中心とした構成要件にして、行為の悪質性等に応じた刑が、自然に科されて行くという構造にするよう、今後とも立法上の工夫が必要ではないかと思います。