元検事や元判事はどう見たのか 大崎事件第4次再審請求棄却

元検事や元判事はどう見たのか 大崎事件第4次再審請求棄却(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

元検事の落合洋司弁護士

確定判決で認定された死因に疑問を投げかける、事故死の可能性を指摘する新鑑定が限られた資料に基づいているのは事実だが、決定は第3次請求審で再審開始決定を取り消した最高裁決定を踏襲し、「疑わしきは被告人の利益に」という観点での踏み込み不足との印象を受ける。  

検察や裁判所は事件の「流れ」を重視する傾向にある。捜査機関によって作り上げられたストーリーに拘泥せず、事件を見直すことが無辜(むこ)の救済につながることを、裁判所は認識すべきだろう。一方で弁護側も「流れ」を否定するために、新たに提示する証拠によって「点をつなげて線にする」争い方が必要だ。

確定判決の、窒息死という、死因に関する根拠が確固たるものではなく、脆弱なものの上に乗っていることを、まず裁判所は認識すべきでしょう。そこは、過去の再審に関する審理で相当程度明らかになっています。

第3次再審請求審の最高裁決定が言う通り、今回の新鑑定も含め、事故死の可能性を指摘する鑑定の根拠が、当時の写真に限られ、証明力に限界はあります。しかし、再審で、請求者が事故死を証明しなければならないわけではなく、新旧両証拠を総合して、確定判決に合理的な疑いが生じているかが問題で、その意味で、今回の決定は、新鑑定をネガティブに捉えすぎた上で、総合評価において確定判決ドグマに引きずられていると批判されても仕方がないでしょう。

今回の決定でも、上記の最高裁決定でも、事故死であれば、死体が隠匿された状態であるのはなぜか、説明がつかないではないかという、そこに大きく引きずられている面があります。そこは弁護団としても、従来の、自宅まで被害者を運んだ2名が死体遺棄も行なったという論法に固執せず、登場する人物の誰かが、何らかの動揺といった状態の中で、咄嗟に死体を隠してしまった(そういった流れは事故死と両立するでしょう)ということも視野に入れる必要があるのではないかと私は思います。

死体遺棄と殺人が一体として捉えられすぎてきていて、死体遺棄が行われたことが、必ずしも先行する殺人の存在を意味するものではない、ということも、弁護団は視野に入れて今後に臨むべきでしょう。