昨日は、一昨日に続き、午前中は刑務所、午後は少年院を見学しました。
刑務所は、「矯導所」という名前になっていました。施設の全体的な雰囲気、印象は、日本の刑務所と大きくは変わりませんでしたが、これまでに私が行ったことがある日本の刑務所よりは、全体として明るい雰囲気のように感じられました。
周囲を取り囲む壁も、日本の刑務所ほど威圧的な感じではなく、その分、電子警備が徹底的に取り入れられており、施設内部に設置されたモニターで、施設周囲や内部の各所の様子が同時に把握できるシステムになっていて、この辺は日本よりも進んでいるのではないかと思いました。
日本の刑務所では、定員を上回る過剰収容が問題になっていますが、この刑務所では、約2000名弱の定員(既決と未決をあわせて)に対し、現在の収容者は合計で約1300名であるとのことで、日本の刑務所関係者にとっては夢のような余裕のある状態でした。日本とは異なり、職員の中に、「警備矯導」と呼ばれている、徴兵制対象者の中からこういった施設へ派遣されている人々がいるとのことで(この施設でも100名弱が仕事をしているとのことでした)、こういった点でも日本よりは余裕があるように感じられました。
見学中、私が、「日本では、受刑者が独居房を希望する傾向が強くなっていると報じられているが、韓国ではどうか?」と質問したところ、担当官は、「そういう受刑者も中にはいるが、韓国の場合、他の人と一緒にいることを望む傾向のほうが強い。」と説明しており、日本とは違うな、と思いました。
既決の受刑者が行う作業は、自動車整備など様々で、この辺は、日本と大きな違いはないと思いました。面会について、電話やインターネットを利用する方法が導入されているところは、日本とは大きく異なっており、こういった便利な方法は、日本でも早く導入される必要があると思いました。
午後は、少年院へ見学に行きましたが、「少年院」というのは、実は適切ではなく、そこは「学校」で、中学校と高等学校が併設されていました。案内してくれた施設長も「校長」という肩書でした。以前は、韓国でも日本の少年院と似た施設があったとのことですが、最近の改革により、教育色を強く打ち出した「学校」へと改革されたということのようでした。
見学した学校は、基本的な各種教育のほか、IT分野の教育に重点を置いているということで、各教室のほとんどに、1人1台の状態でパソコンが設置され、少年達は、パソコンを使用しながら授業に臨んでおり、IT大国と言われている韓国らしい光景であると思いました。
特に特徴的であったのは、この学校が、主としてITを利用した「起業」を支援する態勢を完備していることでした。施設の中に、business incubator という名称の組織を設け、独立した建物も持っており、その中で、起業へ向けて、少年にITを利用したいろいろな取り組みを行わせていました。 建物内には、卒業生に提供しているオフィスもあり、卒業生の中で実際に起業して会社を設立した人が、まず、そこを利用して事業を軌道に乗せ、将来的には外部へ出て引き続き事業を行う、というスキームが考えられているようでした。
日本でも、起業や、それに対する支援ということが話題になることが多くなっていますが、韓国におけるこのような施設での上記のような取り組みは、日本では考えられないだけに新鮮な印象を受けるとともに、「他人に雇われて真面目に働く」ことだけではなく、それなりに能力・意欲のある人に対しては起業という途も用意し、指導して行くというのは、有益な選択肢ではないかと強く感じました。こういった点も、IT大国である韓国だからこそ、ということは言えるかもしれません。
夕方に見学を終了した後、宿泊しているホテルに戻り、夜は、見学参加者と一緒にホテルの近くで韓国料理を堪能しました。
今日も、引き続き見学して、今夜、帰国します。
追記:
朝鮮日報のサイトを見ていたところ、
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2004/10/17/20041017000050.html
という記事がありました。
人権重視の結果、矯正が困難になっていると訴えている刑務官の主張が紹介されており、なかなか興味深いものがあります。