捜査協力、EUに拒否権 署名の協定、死刑廃止論背景に

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20100105AT1G0401Z04012010.html

日本政府と欧州連合(EU)がこのほど署名した刑事共助協定(条約)に「共助を要請した国で死刑の可能性がある犯罪については捜査協力を拒否できる」との規定が盛り込まれていることが4日、分かった。死刑制度がないEU側が要求したもので、実質的にEU側だけが拒否権を持つことになる。殺人事件の容疑者がEU側に逃げた場合など、国境を越えた重大犯罪の捜査に影響が出る可能性も否定できず、論議を呼びそうだ。

EU加盟27カ国はいずれも死刑制度がなく「死刑制度は廃止すべきで、死刑の可能性がある事件の捜査に協力できない」という趣旨の意向を示したという。

この問題については、以前も本ブログで書いた気がするのですが、刑事司法制度や刑罰制度というものは、元々、各国の歴史や伝統の中で形成されてきたドメスティックなものである一方、近時、犯罪捜査や証拠確保、逃亡犯罪人の引渡等で、国際的な協力が進められている(進めざるを得ない)という実態があり、とは言え、主権国家が併存しているという状況があるので、「相互主義」という原則の下、各国が相互で双務関係にある範囲内での協力、ということにならざるを得ないという側面があります。その意味で、上記の記事にあるようなEUの主張は、筋の通った主張ではあるわけで、EU側から見れば、「重大犯罪の捜査に影響が出る可能性も否定できず、論議を呼びそうだ。」などというのは日本側の事情であって、そういうことを言うなら死刑を廃止しろよ、ということになるでしょう。
死刑制度の存廃を考える上で、決定的な要素とまでは言えませんが、こういった事情もあるということを認識はしておいたほうがよいでしょう。