前夜に親方「やってやれ」、力士急死で複数の兄弟子供述

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071007-00000101-yom-soci&kz=soci

県警は、斉藤さんへの一連の暴行は、山本順一・元時津風親方(57)(元小結双津竜)の指示がきっかけとなった可能性があるとみて、改めて元親方ら関係者から事情を聞く方針だ。

私が主任検事としてこの事件を見るとすれば、

1 どのような暴行を「違法」と見るか
2 暴行と結果(被害者の死亡)との因果関係
3 共謀の内容、成立時期

を主たる問題と捉えるのではないかと思います。
1及び2で問題なのは、加えられた暴行全体と死の結果との間の因果関係は肯定できても、どの暴行が結果にどの程度影響を与えたかを特定することが困難なことでしょう。暴行の中に、外形的には「稽古」中のものも含まれている、ということになると、この事件を傷害致死事件と見て良いか、という疑問も生じてくる可能性があります。

時津風部屋力士急死、死因は外傷性ショック・愛知県警
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20071006AT1G0503O05102007.html

このような場合、一連の暴行が開始される前の時点で、「親方の指示」に基づいて親方及び弟子の何名かの間で、「暴行による制裁を加える」という内容の共謀が成立し、その後、その共謀関係が維持され、他の弟子との間でも順次共謀が成立しつつ、一連の暴行が加えられた(「稽古」の外形を伴ったものも正当業務行為を逸脱した制裁目的の違法なものであった)という認定が可能であれば、3を軸として、1及び2の解明が難しい点もクリアでき、 共謀、暴行に関与した者全体を傷害致死罪に問うことへとつながってくる可能性があります。
捜査機関の捜査の方向性としては、おそらく、そのような認定を目指すものになっていることでしょう。