「国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源(上)」

 

Amazonオーディブルで聴くのに何か良さそうなものはないかと探していたところ、これがあり、とりあえず上巻まで聴きました。なかなかおもしろくて、今は下巻を聴いています。

この種の本でありがちなのは、抽象論に終始して具体論がないというものですが、本書では、世界中の過去の具体的なケースを次々と紹介しつつ論を進めています。開かれた包括的制度の優秀さ、国家社会の発展へとつながる利点に対し、閉じられた、ごく一部の者らのための収奪的制度が、一時的には豊さや繁栄をもたらすように見えても長続きせず、ごく一部の者らの間の闘争を招き、衰退して発展を阻害することが、これでもかこれでもかという感じで説かれます。

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも、鎌倉幕府内部で熾烈な権力闘争が行われ次々と人が死んでいきます。これは、当時はまだ収奪的制度の最中だったからでしょう。その後の日本は、室町から戦国へと進み、次第に権力は日本全国へ分散していきます。これを、包括的制度への歩みと評価するかどうかはともかく、鎌倉幕府初期のような権力闘争は、やはり収奪的制度特有のものなのでしょう。

戦後の日本は、世界に稀に見る開かれた包括的制度の国(もちろん欠点も抱えてはいますが)になっていると思います。そこにこそ、今後の日本の未来、可能性があるのではないかと思いつつ、今は下巻を聴いています。