「遺言 野村克也が最期の1年に語ったこと」

 

著者は、長年、スポーツ紙の野村番記者として野村克也氏の身近にいた人で、逝去直前の1年ほど、食事をしながら野村氏の肉声に接していて、本書では、その際のことや追憶の中の野村氏が語られています。

野村氏の信条として、仕事上、厳しく接するため選手やコーチと個人的な交際はしないままでいて、晩年は奥さん(サッチー)に先立たれ寂しく過ごしていたのが、著者の尽力でかつての選手やコーチらと再会を果たして、その際の素直な嬉しさも、本書では紹介されています。

野村氏が成し遂げたこと、残したものの大きさを感じる一方で、そのために同氏が犠牲にしてきたもの、失ったものの大きさも感じられ、大きな惜別感とともに、人が生きることの厳しさ、難しさといったことも感じられました。

良質なノンフィクションであり、野村ファンにとっては必読の一冊でしょう。