著者の前作「遺体」は、東日本大震災直後の人々の姿を赤裸々に伝えた、実に優れたノンフィクションでした。
映画化もされています。
本書(津波の墓標)は、前作で描ききれなかった部分を描いているという感じで、実にリアルであり、震災後の人々の悲しみが伝えられていました。著者も指摘しているように、震災報道では、報じる報道機関の方針、フィルタリングによって、全体像の一面が偏った形で出てくる傾向があります。そういう偏向を拝したありのままの真実を伝えようとする著者の真摯な姿勢もあって、本書は貴重なノンフィクションになっていると感じました。
前作もそうでしたが、著者の叙述そのものも、私は非常に気に入っていて、その点でも、ノンフィクションライターとして非常に高いレベルにあると思います。今後も読み応えのある作品を期待しています。