「砂漠の狐」ロンメル ヒトラーの将軍の栄光と悲惨 (角川新書)

 

「砂漠の狐」ロンメル ヒトラーの将軍の栄光と悲惨 (角川新書)

「砂漠の狐」ロンメル ヒトラーの将軍の栄光と悲惨 (角川新書)

 

ロンメル将軍に関する私のイメージは、第二次世界大戦中の北アフリカ戦線におけるドイツの名将、ドイツ国防軍の誇り高き正統派の軍人でありつつもヒトラーに気に入られ、しかし、最後は国のためを思いヒトラーから離反し、暗殺計画への関与を疑われ死へ追いやられた悲劇の人、といったものでした。前から興味ある人物で、関連本を何冊か持っていますが読み通せていなかったところにこれが出て、アマゾンでなかなか良い評価が付いていたので早速Kindleで落として読んでみました。

ロンメルの生い立ちや軍人としての歩み、戦いの軌跡が丹念にたどられ、丹念なだけにちょっと読むのに骨が折れる感もありましたが、ロンメルの人物像や長所、短所がよく理解できました。勝ち戦だけでなく負け戦も多く経ていることにも共感できるものがありました。

著者は、ドイツ国防軍の中で傍流であったロンメルが、正統な参謀教育も受けておらず、師団長クラスまでの戦術家としては見るべきものがあったが、より大きな軍団レベルを動かす能力には欠けていたことを指摘します。また、傍流の人物にありがちな、強烈な自己顕示欲に動かされる傾向が強く、行き過ぎた指揮官先頭や独断専行、補給軽視により、多くの犠牲者を出し作戦面で失敗することが少なくなかったことも指摘しています。著者の指摘は具体的事実に即しており、強い説得力が感じられました。

一方で、著者は、ロンメルが敵に対する信義を重んじ、ヒトラーによる捕虜殺害の命令にも従わなかった、軍人としての高潔さを高く評価しています。その辺が、上記のような悲劇的な最期への同情とともに、今なおロンメルへの憧憬、支持が広くある理由でしょう。

本書は、最新のロンメル研究の成果を踏まえつつ、等身大のロンメル像をわかりやすく提示するもので、とても参考になる、意義ある一冊と強く感じつつ読み終えました。ロンメルに関心ある方には是非お勧めしたいです。