素顔の西郷隆盛 (新潮新書)

素顔の西郷隆盛 (新潮新書)

素顔の西郷隆盛 (新潮新書)

NHK大河ドラマ西郷どん」は、私も観ていて楽しんでいますが、あれはあくまでドラマで、西郷隆盛という人は、実際、どんな人だったのだろうかと思っていたところ、この本を知って読んでみました。
著者が、様々なエピソードや著者自身の印象、感想を交えつつ、西郷隆盛の生涯がたどられていて、新書なのでコンパクトで読みやすいものがありました。ただ、結局、西郷隆盛という人はどういう人だったのか、よくわからず、もやもやとしたものが残りました。
ただ、感じたのは、革命家として明確なビジョンや国家像があったわけではなく、幕末から明治にかけての大きな変革期に、「変革」という目的のため、その人格的な偉大さをもって人々を感化し動かすという、そのために大きな役割を果たした、そこにこそ歴史的な意義があったのではないかということでした。そうであるだけに、明治維新後、新国家建設という状況の中では光り輝くものがなく、その「人に担がれる」側面が次第に肥大化、一人歩きしてしまい、最後に西南戦争で非業の死を遂げるに至ったのではないか、そういうことを、読後感としてしみじみ感じました。
こういう人物を、明治6年の政変で鹿児島へ帰してしまったのは、当時の政府の誤りであり、巨大な権威として遇する道を模索するべきだったと思いますが、西南戦争がなければ独立国状態の鹿児島がどうなったか、ということを考えると、西郷隆盛は、最後にその役割を果たして生涯を閉じたと言えるのかもしれません。