https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180603-00000001-khks-soci
最高検は今年3月、全国の地・高検に「制度利用に値するだけの重要な証拠が得られ、供述の信用性を裏付ける十分な証拠がなければ取引合意はしない」とする運用指針を通達。制度の適用は「処分を軽減しても国民の理解が得られる場合」とし、高検の指揮で最高検と協議するとした。
捜査機関と対峙(たいじ)する弁護人には、取引協議の際の立ち会いや合意への同意が義務付けられた。弁護士の間では、虚偽供述で無実の人を冤罪(えんざい)に巻き込むことへの懸念が根強いが、取引に伴う免責による組織防衛など企業法務面での積極的な利用を想定する向きもあり、受け止めはさまざまだ。
従来の捜査実務の中でも、取調官と被疑者との間で、こういう供述をすれば有利になる、処分や刑が軽くなるといったやり取りが行われ、それが誘引となって供述に至ることがありました。しかし、それは、あくまでインフォーマルな、裏でのことで、供述する側の期待が実現するとは限らず、その意味で、「腹をくくって」自己責任で供述する側面は常に存在していたものでした。
新しい制度では、取引により供述することで、有利な成果が得られることが法的に裏付けられていますから、それだけ、嘘をついても有利に取り扱われたいという誘惑が強く働くことになり、そのような経緯で出てきた供述については、信用性が慎重に吟味されなければ重大な冤罪を生みかねないことになります。捜査機関において、慎重な上にも慎重な取り扱いがなされるだけでなく、関与する弁護人も慎重に臨まないと、取り返しがつかない大変なことが起きかねないでしょう。
日本の刑事司法が、重大な曲がり角に、今立っているということを強く感じるものがあります。