「政府を頼れない」 海賊版サイト遮断、苦悩するISP業界団体

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政府の緊急対策には、歯切れの悪い部分がある。政府がブロッキングへの法的リスクを負っていないことだ。ブロッキングでは、ユーザーの閲覧先をISPが確認し、アクセスを遮断する。この「閲覧先をチェックする」という行為は、憲法で保護されている通信の秘密を侵害するもので「形の上では犯罪に当たる」(曾我部教授)。ただ、例外として刑法上の「緊急避難」に該当すれば、侵害が正当化される。
しかし海賊版サイトへのブロッキングは、緊急避難の要件である「現在の危難」「補充性」「法益権衡」などを満たしていないとの指摘がある(関連記事)。さらに政府が公開した緊急対策(案)では「緊急避難の要件を満たす場合には、違法性が阻却されるものであると考えられる」としか説明がなく、政府が「緊急避難の要件を満たしている」と“保証”しているわけではない。

電気通信事業法では、第179条で、

1 電気通信事業者の取扱中に係る通信(第百六十四条第三項に規定する通信を含む。)の秘密を侵した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 電気通信事業に従事する者が前項の行為をしたときは、三年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。

という規定がありますから、ブロッキングは、記事にもあるように、通信の秘密侵害罪に該当し、緊急避難が成立することで違法性が阻却されることになります。
ただ、「現在の危難」といっても、ブロッキングを行った時点で、厳密に、誰の権利(著作権)が現に侵害されているか、確認することは困難でしょう。また、「補充性」、つまり、他にとるべき手段がないということも、刑法上の緊急避難ではかなり厳密に考えられていて「その危難を避けるための唯一の方法である」ことを要するとされていますが、現状の、著作権者を保護するための議論では、ブロッキング以外にも複数の方法が提唱されているようであり、その中で、ブロッキングが「唯一の方法である」とするのは無理があるように思われます。著作権者を保護する必要性はあっても、その手段として、通信の秘密との関係であまりにも乱暴すぎるのではないかという批判があるのは当然でしょう。
目的のためには手段を選ばないというのは、健全な法治国家の在るべき姿とは言えず、ブロッキングがなし崩し的に実施されつつある現状は、今後に大きな禍根を残しかねないものを感じます。