元TBSワシントン支局長を性犯罪被害で告発した女性が顔を隠さずに会見

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170529-00000146-sph-soci

同9日に詩織さんは警察に相談し、30日に告訴状が受理された。6月4日に山口氏が日本に帰国するタイミングで、成田空港で逮捕するとの連絡が警察から入り、詩織さんは滞在先のドイツから帰国。だが、捜査員から山口氏を逮捕できなかったとの連絡が入ったという。山口氏は8月26日に書類送検されたが、16年7月22日付で不起訴処分になった、としている。

この件について、私のところにもマスコミからの質問が入っていて、微妙さがあるのでブログでコメントしておきますが、こういった事件は、所轄警察署で捜査を進め、必要に応じて検察庁とも相談しつつ逮捕にも踏み切るもので、上記の「逮捕する」という流れの中では、逮捕前に検察庁に事前相談し、逮捕については了承(その後に特に問題もなければ勾留も請求する)という内諾は受けていたものと推測されます。こういう内諾、了承は、「起訴することを確約」というものではなく、事件の性質上、逮捕、勾留の理由、必要性はあるだろう、身柄事件として捜査の上で検察庁の処分を決める、というもので、それ以上のものではありません。
ただ、その後、他の報道によると、警視庁本部の指示により逮捕せず、捜査が捜査一課に引き継がれたとのことで、そこはかなり異例でしょう。通常、所轄警察署が本部に頼んでも、通常の事件は所轄でやれと言われるものですし、逮捕状が出ているものが、その後に上からの指示で執行が見合わされるのも、普通はないことです。例えば警視庁の刑事部長とかそのクラスの人が、下から多数上がってきている所轄レベルの事件決裁で、いちいち細かく目を通すことは無理で、より上から(政治とか警察庁とか)、特定の事件について何らかの依頼、働きかけがあって、それが動機になってその事件にフォーカスするということがないと、こういう展開にはならないものです。
ただ、この種の事件というのは、密室内での1対1のやり取りが問題になり、否認事件では水掛け論的な展開になりがちで、犯罪の立証が難しく起訴できるかどうかは微妙な部類の事件になります、当初は警察から身柄事件として送りたいという相談を受け内諾していた検察庁に、その後、警察から改めて、捜査を遂げた結果、在宅で書類送検したいと報告があれば、検察庁としては、特に身柄事件にしなければならないという積極的な理由が見当たらない限り、在宅での書類送検ということで了承するでしょう。
書類送検後、検察庁での処分決定まで約1年程度かかっているというのも、検察庁で必要な捜査を慎重に行っていたことが窺われ、証拠上、事実認定上、「捜査が捻じ曲げられた」「起訴できるのにしなかった」とまで言えるか、そこは何とも言えないものがあります。そういう結論にならざるを得なかった事件ということになれば、逮捕を見合わせ在宅で捜査して書類送検したという判断が、では間違っていたかということになると、身柄の拘束について慎重に取り扱ったわけですから、直ちにそれがいけなかった、おかしかったとも言えないでしょう。
もやもやとした、不明朗なものは感じられるものの、警察、検察庁(特に警察)の事件処理が違法、不当なものであったかというと、報道を見る限りでは何とも言えないというのが私の感想です。ただ、かなり異例の展開をたどったということは言え、そういう異例の展開をたどった理由が明らかにならない限り、疑惑は疑惑としてあり続けるだろうと思います。