フィリピンBC級戦犯裁判 (講談社選書メチエ)

前から、読まねば、と思っていたのですが、やっと通読できました。ちょっと前にフィリピンへ行く機会があり、戦犯が収容されていた旧モンテンルパ刑務所も、外からですが見学する機会があり、読みながらその時のことも思い出しました。
本書では、フィリピン戦線での、特に末期に起きたマニラ市街戦におけるような日本軍による数々の残虐行為、フィリピン国民の憤激の中で行われたBC級戦犯裁判の経過やその後の恩赦への動きを克明に描写していて、わかりやすく、読んで勉強になりました。当時のフィリピン政府高官が、恨み、憎しみの連鎖を避けるため、先行して赦しを与えようと、葛藤の中で努力した姿も印象的でした。戦後日本が、様々な人々の善意や赦しの上に、日本国民の努力を積み重ねて今があるということを、常に謙虚に受け止める必要があり、それは、よく安直に言われがちな自虐とは異なるということを、改めて強く感じました。