http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160509-00000067-jij-soci
わいせつ物陳列については無罪とした。
弁護側は「芸術活動の一環で、わいせつではない」として全面無罪を主張していた。
被告は2013〜14年、女性器をかたどった石こう3点を女性向けアダルトショップに展示したほか、自身の女性器の3次元データを支援者らにメールで送信したとされる。
この件については、本ブログでも、過去に
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20140722#1406020608
で
確立した判例によれば、わいせつとは、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう」とする一方、芸術性を有する表現行為については、様々な事件で激しくわいせつ性が争われてきた歴史があり、例えば、悪徳の栄え事件最高裁判決(最大判昭和44年10月16日)では、文書に関する判断ですが(表現、という意味では本質的には変わらないでしょう)、
文書がもつ芸術性・思想性が、文書の内容である性的描写による性的刺激を減少・緩和させて、刑法が処罰の対象とする程度以下に猥褻性を解消させる場合があることは考えられる
という判断を示していて、本件のように、女性器を撮影した画像、そのデータ、といったものではなく、あくまでデータを使用して3Dプリンターで造形する、といった形態(画像に比べ視認されることでのわいせつ性はそもそも相当低減されるでしょう)の場合、上記のような判例にも照らしつつ、そのわいせつ性や行為者の意図(わいせつ性に関する故意)が、相当慎重に検討される必要があると思います。
とコメントしたことがありますが、陳列について無罪、というのは、そのような点を裁判所も無罪方向で考慮したということなのでしょうか。判決文を見てみたいと思います。
一部無罪について検察官が控訴する可能性もあり、この問題はまだ上訴審で争われ、最終的には最高裁の判断が出るまで終わらないでしょう。