都庁爆発物事件:元オウム菊地被告、2審で逆転無罪

http://mainichi.jp/select/news/20151127k0000e040249000c.html

菊地被告は95年4月下旬、山梨県の教団施設から3回にわたり薬品を東京都内のアジトに運び、教団幹部のテロ行為を手助けしたとして起訴された。事件は元代表松本智津夫麻原彰晃)死刑囚(60)に対する捜査のかく乱が狙いだったとされた。

私は、平成7年4月から平成8年7月まで、東京地検公安部に所属して、その間、オウム真理教の信者をかなりの数、取り調べました。その多くは末端やそれに近い位置にいた信者でした。オウム真理教の場合、信者に「ワーク」と称して様々な作業を課しており、その中に、違法な活動もあったわけですが、指示が上から下へと次々と降ってくるような状態の中で、なぜそのようなワークをさせられているのか、どういう意味で何を目的にしているのか、知らされないままでワークしている信者もかなりいて、犯罪の認識、故意、目的といった点で、取調べで供述を得るのにかなり苦労することが多かったことが思い出されます。そういった点について、自白がなければ、共犯者の供述や状況証拠に依拠して立証するしかないわけですが、それにも限界はありますから、平成7年、8年当時も、立証が詰め切れずに起訴にまで至らなかったという末端やそれに近い信者はいたものでしたし、そこは厳正であるべき刑事事件の立証というものに照らしてやむを得ないものがあるでしょう。
この事件の証拠を見ていないので、無罪という結果が妥当なのかどうかは何とも言えませんが、そうした背景を踏まえると、事件の中身にも照らして、1つのあり得る結論ではないかという印象は、当時の捜査経験者として感じるものがあります。