ホロコーストと外交官: ユダヤ人を救った命のパスポート

ホロコーストと外交官: ユダヤ人を救った命のパスポート

ホロコーストと外交官: ユダヤ人を救った命のパスポート

この本の存在を少し前に知り、是非読んでみたいと思って購入し、何とか一通り読むことができました。ホロコースト関係の本の中でも特に読むべきものと言えるように思いました。
リトアニアで外務省の訓令に反してビザを発給し多数のユダヤ人を助けた杉原千畝の功績はよく知られているところですが、当時、各国の外交官が、その多くが杉原千畝と同様かそれ以上に困難な立場に立ちつつも、迫害されたユダヤ人救済のため懸命に活動した状況が、本書ではかなり具体的に紹介されています。著者は、自らも幼少時にユダヤ人として迫害を逃れ九死に一生を得た経歴を持ち、イスラエルで「諸国民の中の正義の人」指名委員会の局長を務めるなど、こうした当時の状況には通暁している立場にあり、それだけに貴重な資料にもなっていると思います。当時のヨーロッパ各国の個別事情やその中でユダヤ人が歩んだ(歩まされた)過酷な運命が紹介され、ユダヤ人迫害史としてもわかりやすい内容になっていて、巻末に付された主要人名・事項索引もよくできていて(これは日本語版オリジナルとのことでこういう面倒な作業をやり遂げた著者、出版社は偉いと思います)、ホロコーストに関心を持つ人は手元に置き必要に応じ参照すべき1冊と言って過言でないと思います。
残念ながら、現代においても戦乱や政争の中、身の危険を逃れて難民となる人々は数多く、それに対して人道に沿って対応、救済すべき必要性はますます高まっています。そういった状況、場面に臨み、人として何をすべきかを考え決断する上でも、本書は貴重な教訓、指針となるものであると強く感じます。