トヨタ元常務役員を不起訴処分、釈放 東京地検

http://digital.asahi.com/articles/ASH7775P9H77UTIL04V.html

役員は「腰やひざの痛み緩和のために必要だった」と供述しており、捜査の結果、実際に痛みを伴う症状があることが判明。

役員が逮捕後に自ら辞任したことも考慮し、地検は起訴を見送ったとみられる。

私も、検察庁在職当時に、海外から郵送で薬物を送らせて税関で発覚した事件の捜査を担当したことがありますが、その事件では「勝手に送られた」といった否認を被疑者がしていて、慎重に裏付け捜査を行って起訴した記憶があります(起訴後、被告人になった途端に一転全面自白して供述調書をとってくれとせがまれ、、余計な手間をかけさせるなと散々説教をしてから自白調書を作成した記憶もあります、なお、被告人が狙っていた第1回公判前の保釈は見事に却下されました)。このように、この種の事件はいろいろと弁解も出やすく、上記の件では薬物の量も57錠と、少量とは言えませんから、当初は否認(犯意)でもあったことも勘案すると、身柄事件になるのは、現行の薬物捜査の中ではやむを得なかったのかな、という気がします。
ただ、起訴相当か、起訴価値があるかということになると、この薬物が米国でも日本でも、医師の処方箋があれば入手でき、濫用されるだけでなく医療目的でも広く使われている、とのことですから、情状面で、濫用ないしそれに準じる目的があるといったことでないと(例えば第三者への譲渡、拡散目的があったとか)、量も大量にまでは至っておらず、ちょっとどうかな、という印象も受けます。
起訴、という選択もあり得たとは思いますが、日本在住の外国人で日本における薬物入手のルールに疎かったと思われることや大会社の役員という要職を辞して社会的制裁も受けていることなども考慮されて起訴猶予、というのは、それなりに座りの良い処分、という気がします。