アマゾンジャパン捜索 児童ポルノ出品放置疑い

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015012490071109.html

県警は昨年九月から今年一月にかけて、アマゾンの通販サイトに児童ポルノの写真集などを出品していたとして、同法違反(販売目的所持)容疑で東京や愛知、滋賀など全国八都県の約十業者を摘発している。県警はさらに、サイトの管理・運営者であるアマゾンジャパンがこれらの出品を放置していた疑いがあるとみて、捜索の押収品の分析を進める。

アマゾンの通販サイトで売られていたのは少女の写真集など。マニアの間でプレミアが付き、十万円近い価格で販売されている商品もあった。同社のホームページ(HP)によると、会員登録をして販売手数料などを払えば、商品名や価格などを書き込んで商品情報を登録するだけで、誰でも通販サイトに商品を出品できるという。

私が、2000年にヤフー株式会社に入った直後に、ネットオークションでの利用者による児童ポルノ販売について、警察の強制捜査を受けたことがありました(当時、結構大きく報道されました)。アマゾンも、同じところを突かれているようですね。
ここは、いわゆる「プロバイダ責任」として議論されているところで、大量の情報をネット上で仲介する立場に対して、いちいち共同不法行為とか共犯といった責任が追及されるようでは、怖くてやっていられない、ということになりますから、責任には限界があるという視点でどのような場合に責任が生じるかが議論されてきています。また、日本では、民事責任についてはプロバイダ責任制限法が既に一定の免責を与えていて、

第3条 特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。
1  当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。
2  当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。

と定められていますが、現状で、「刑事」責任についてはこうした免責規定がないため、上記の記事のような事件で、捜査当局が本気になると、アマゾンのような立場の者も強制捜査の対象になってしまいがちです。
この点に関してはいろいろと刑事の裁判例が出ていますが、例えば、アマゾンのように様々な商品が掲載され利用規約に基づいて違法、不当な商品が排除される中でたまたま児童ポルノが特定の商品として出品されている状態を管理者側が「知って」対策を講じていなかった場合に、これを幇助犯として処罰しない、という考え方が確立しているわけではなく(その程度では立件、起訴には至っていないのが通常の実務ですが)、おそらく、愛知県警としては、単に知って、というレベルを超える、単なる放置というよりもより積極性のある、作為と同視される程度の不作為がある、立件、起訴に十分値するという立証を目指して、まずはガサに入ったのではないかと推測されます。
この事件の今後の行方には、プロバイダ責任の観点からも大いに注目されるものがあると思います。
私がアマゾンジャパンにアドバイスするとすれば(あくまでも報じられている事情程度しかわからないことが前提ですが)
・ 問題になっている出品の出品者の、登録時の審査や登録後のチェックに問題はなかったか
・ 出品後に、当該問題出品について、法令違反という情報が寄せられていなかったか、寄せられていたとすればその対応はどうだったのか(不十分さはなかったか)
・ 法令違反等、利用規約違反の出品を速やかに落とすための仕組の徹底した見直し
を早急にやってほしいと思いますし、そこをできる限りやっておくことが、「幇助」といった誹りを受けないための有効な対策になります。