児童ポルノ:「単純所持」禁止 改正法が成立

http://mainichi.jp/select/news/20140618k0000e010172000c.html

「性的好奇心を満たす目的で、自己の意思に基づく所持」には1年以下の懲役か100万円以下の罰金を科す。単純所持処罰の必要性が議論されて十数年。被害拡大の歯止めに期待がかかる。

性犯罪やこういった児童ポルノ絡みの犯罪は、人の本能や「性癖」に基づくもので、処罰、厳罰化したからなくなるというものではなく、処罰が強化されたから、単純所持も処罰されるようになったから、だから事態が目に見えて変わる、という幻想は抱かないほうが良いでしょうね。
ただ、世界的に、例えば児童ポルノの単純所持が処罰対象になる、という流れの中で、日本のような影響力の強い大国でそこが処罰対象になっていない、ということになると、こういった犯罪への世界的な取り組みを行う上で、バランスを欠くことになり、逃亡犯罪人引渡や捜査共助の際に要求される「双罰性」にも問題が生じかねません。大きな流れとして見た場合、単純所持処罰はやむを得ないのではないか、という感想を、私は持っています。
ただ、以前、

「サイバー犯罪と刑事捜査を考える 〜児童ポルノ単純所持規制の論点」のレジュメ
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20130221#1361432146

で指摘したような問題が、では今回の改正ですべてクリアになったかというと、例えば、「自己の意思に基づく所持」が最終的には裁判所による事実認定で判断される以上、各種状況証拠による「推認」が行われることで誤った所持認定が起きる恐れは残っていると言わざるを得ませんし、いくら付帯決議があっても捜査権の濫用を排除することもなかなか困難なものがあるでしょう。
上記の記事にあるような

現行の児童ポルノの定義の一つ「衣服の全部または一部を着けない児童の姿態で、性欲を興奮、刺激させるもの」に、「殊更に性的部位が露出、強調されているもの」との文言を追加して限定化

という点も、「殊更に」とか「強調され」といった、規範的な評価を伴う構成要件要素が存在している以上、殊更かどうか、強調されているかどうかといった水掛け論が、児童ポルノかどうかという本質的な問題について常に生じる余地を抱えてしまっているということになり、そこに、単純所持処罰化により処罰対象が飛躍的に拡大したことが加わったことで、相当多数の人々が、これは児童ポルノに該当するのかという疑念を持ちつつその処理に思い悩むような事態を招くことにもなることが予想されます。
改正法について、今後、できるだけ早く、解釈について立法関与者による解説が公表される必要があると思いますし、運用についても、濫用や過剰な取り締まりを避け、事態がより良い方向へと進むように、慎重な対処が求められると思います。