ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書)

ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書)

ホロコースト―ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌 (中公新書)

前に読んだことがあるような気もしたのですが、そうであってもかなり前で、じっくりと読んでみました。新書で読みやすいのですが、中身が濃くて、実に勉強になりました。
日本にいて、ナチスによるホロコーストについての情報に接すると、悲惨さがセンセーショナルに強調されたものになりがちですが、本書では、反ユダヤ主義の長い歴史や、ナチスだけによりホロコーストが遂行されたのではなく、ナチス自体も、紆余曲折を経て、その間にも様々な迫害、虐殺をユダヤ人に対して繰り返しながら、また、ナチス以外の様々な協力者に支えられながら、最終解決としての絶滅収容所におけるシステム化された大量虐殺へ至った、その経緯が、客観的かつ冷静に紹介されています。戦後の、ホロコーストに関する研究や論争の状況も、簡潔ながらわかりやすく書かれていて、参考になりました。
このような悲劇を繰り返さないための仕組みは、まだ不十分なものですが、心ある人々が、繰り返さないという決意をもって臨みそれぞれの立場で努力する必要性を痛感しました。