「日本と中国は開戦前夜なのか」 安倍首相発言に欧米メディア衝撃

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140124-00000005-jct-soci&p=1
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140124-00000005-jct-soci&p=2

「衝突や摩擦が思いがけず、偶発的に起きるかもしれない」
19世紀末ごろの英独関係は悪いものではなかったが、20世紀初頭にかけて両国海軍の軍拡競争が激しさを増していく。その後ドイツが外国への影響力を強めるため鉄道の敷設に乗り出すと、英仏露がこれに強く反発。最終的にはドイツとオーストリア、イタリアによる「3国同盟」と、英仏露の「3国協商」を軸とした対立に発展し、最悪の事態へと進んでいった。

外国メディアへの首相発言
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date2&k=2014012300841

によると、首相の説明は、

尖閣諸島は1895年に日本の領土となった。日中両国は互いに最大の貿易相手国であり、日本企業の進出により中国も雇用を創出してきた、切っても切れない関係だ。従って、一つの課題ゆえに門戸を閉ざしてはならず、戦略的互恵関係の原点に戻るべきだ。条件を付けずに首脳会談を行うべきであり、首脳会談を重ねることで両国関係の発展の知恵が生み出されると思う。
(日中が軍事衝突する可能性について質問され)ちなみに、今年は第1次世界大戦100年を迎える年だ。当時、英独関係は大きな経済関係にあったにもかかわらず、第1次世界大戦に至ったという歴史的経緯があった。ご質問のようなことが起きることは日中双方のみならず、世界にとって大きな損失になる。このようなことにならないようにしなくてはならない。中国の経済発展に伴い、日中の経済関係が拡大している中で、日中間の問題があるときには相互のコミュニケーションを緊密にすることが必要だ。

とのことであった、ということです。赤字の部分(わかりやすくするため私が赤字にしましたが)だけではなく、前後を読むと、首相の意図がどこにあるかは政府が説明している通りでしょう。ただ、なぜ、ここで第1次世界大戦や「大きな経済関係にあったにもかかわらず第1次世界大戦に至った」英独、というものを唐突に持ち出す必要があったのか、まったくよくわかりませんし、聞いている側としては、その前に出てくる、経済上で密接な関係にある日中関係と当時の英独関係を、話の流れの中、頭の中で結びつけて考えてしまうのも無理からぬことだった、という印象を受けます。こういうミスリードも失言の中に含めるのであれば、これは一種の失言になると思います。
さらに、首相は、軍事衝突について、「このようなことにならないようにしなくてはならない。」で済ませるのではなく、「私はそのようなことを起こさせない。」と、断固として断言しなければならなかった、と私は思います。日米開戦も、当時の東条首相が、さらには昭和天皇が、開戦を断固として許さなければ開戦には至っていなかったでしょう。軍事衝突、戦争を避けようとしつつも避けられなくなったらやむを得ないと考える、少なくともそのような印象を与えることは、非常に危険なものをはらむものだと思います。
かつての、戦争への深い反省に立ち、近隣諸国との良好な関係に留意しつつ、不戦を誓い、日本国憲法を遵守し、専守防衛を堅持する、軽武装、経済重視の日本という印象があれば、おそらく、こういう騒動は起きなかったのではないかと思いますが、積極的平和主義、集団的自衛権肯定への転換を図る、改憲への強い意欲、といった、「日本はもはやかつての日本ではない」「なくなろうとしている」という見方が、首相の唐突な(不用意な、とも言うべきでしょう)第1次世界大戦の英独、という話で、聞き手の一部をあらぬ方向へと暴走させてしまった、ということではないかと思います。
確かに、誤解、ではありましたが、そのような誤解を招いた背景にも慎重に目を向け、紛争や戦争は、そういった誤解やボタンの掛け違えのような原因からも偶発的に起こり得る、ミスリードしないように慎重な言動を心がける必要がある、ということを、首相をはじめとする政府関係者は肝に銘じておかなければならないでしょう。