<私の疑問>「共謀」判断自白任せ

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/list/CK2013112802000119.html

東京新聞にも、私に対するインタビュー記事が掲載されましたね。

市民運動をしている人や取材者が原発在日米軍、外交機密に関する情報を知ろうと、秘密を扱う公務員に近づくことで、犯罪としての疑いがかかる可能性がある。起訴されなかったとしても、家宅捜索されたり、事情を聴かれたりすれば、人々の生活に支障が生じかねない。
しかも、秘密の漏えいをめぐって共謀したかどうかの判断は、自白に頼らざるを得ない。自白した人がうそを言っていた場合、無関係の人が巻き込まれ、冤罪(えんざい)を生むリスクもある。

私は、この世界で仕事をするようになって今年で25年目で、随分といろいろな刑事事件、そこに現れる人々を見てきましたが、厳罰を科せば犯罪は防止できるのか、というと、そういう単純なものではないと思います。確かに、そうした効果が出るタイプの犯罪、人、場面もあると思いますが、特定秘密保護法案が対象とする「情報」の世界で、故意に情報を漏らそうとする人々は、処遇への不満、体制への疑問、金銭欲や自己顕示欲、いわゆるハニートラップ等々、人としての様々な要因からそのような行為に及ぶもので、漏らすにあたっては自分が捕まるとは思っておらず、捕まらないように事を運ぼうとするものですから、厳罰は、犯行への一定の抑止効果はあっても、より大きなものに誘引されて人は漏えいへと向かうでしょう。そのような行為に対する効果的な対策は、やはり、秘密の厳重な管理であり幾重にも秘密を防護する体制を確固として持つことだと思います。
よく、日本は秘密保護法制がいい加減だからと諸外国から言われた、といった話が、曖昧なまま語られますが、だから、広範な処罰や厳罰が必要、というのはあまりに短絡的です。既に国家公務員法自衛隊法等で秘密漏えいやそれに関与する行為は処罰対象になっていて、なぜ、ここで、ここまでドラスティックな、国民の権利や様々な情報へのアクセスを根こそぎ禁圧するような法制度を唐突にも導入する必要があるのか、強い疑問を感じます。
暗く寒い国々に対抗するために、自由で民主的な国家であったはずの我が国が、暗く寒い国になって行く、そのことの矛盾や怖さといったことに、素朴、率直に目を向けなければならないでしょう。