<「自炊」代行訴訟>複製差し止めと賠償命令 東京地裁判決

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130930-00000070-mai-soci

2社が著作者らの許諾を得ずに利用者(読者)から1冊数百円程度で自炊を請け負っていたことについて、原告側は「著作権法に違反する」と主張し、差し止めと損害賠償を求めた。これに対し業者側は、同法が個人で利用するための「私的複製」を認めていることを根拠に「利用者の『手足』になっていたにすぎず、法的に問題ない」と反論していた。
大須賀裁判長は「一般の読者が自ら設備を準備して電子化の作業をすることは困難。業者が利用者の管理下で複製していたとは評価できない」と退けた。

私的複製を、どの範囲まで認めるかが問題になりますが、あくまで「私的」なものである以上、自ら行うか、それと同視できるような態様、規模のものというのが法の趣旨で、組織的に、かつ有償で自炊を代行する業態を適法な私的複製と評価するのは、やはり現行法上は困難でしょうね。
ただ、こういった自炊代行は、あくまで、既に売れた本を自炊してデータ化しているに過ぎず、それにより、本来、売れるはずの本が売れなくなる、という性質は持っていません。こうした自炊代行を禁圧するのであれば、上記の記事にある「1冊数百円程度」の手数料を、著作権者に支払うことで、既に紙の本を持っている人であれば電子書籍を購入できるようにしてほしい、と感じるのは、おそらく私だけではないでしょう。
従来の著作権法電子書籍普及との間に生じている狭間、その中で便利さを求めながらも「権利」という厚い壁の前で不便を強いられる利用者、そういった利用者が紙の本からますます離れてしまうのに日本ではなかなか電子書籍が広がらない現状、ビジネスチャンスの喪失等々、いろいろな問題が浮かび上がってくる、そういう気がするニュースです。