元麻酔医に無罪判決 手術後脳障害 監視義務認めず

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013091702000220.html

毛利晴光裁判長は判決理由で、被告が全身麻酔の患者を常時監視する注意義務を怠った、との検察側主張について「国内の麻酔担当医が常時監視しているとは必ずしも言えない」と指摘。「不十分な捜査のまま起訴したという疑問がある」と述べた。
弁護側は、常時監視は麻酔科学会の指針で、目標にすぎないとして無罪を主張していた。
起訴状によると、被告は〇八年四月、女性患者の乳がん手術で、全身麻酔をした後に適切な引き継ぎをしないまま退室。麻酔器の管が外れたため約十八分間にわたり酸素供給が止まり、患者に高次脳機能障害と手足のまひを負わせたとした。

他の報道によると、上記の「酸素供給が止まった」時点での、手術を担当していた医師の措置も問題になっていたようで、そもそも、誰にどのような責任が生じ得るのか、わかりにくい面があるのですが、素人の私が考えても、例えば、複数の手術が同時に行われた場合に、1人の麻酔医が同時に担当しながら進める、ということもあるのではないかと思われ、常時その場にいて監視する、というのは、そうあるべきではあっても、それがされていないから、直ちに過失がある、ということにはならない、という裁判所の指摘は理解できる気がします。「適切な引き継ぎ」という点にも微妙さを感じますが、麻酔医療の実態について、複数の麻酔医から十分な意見を聴取する、といった捜査が行われていれば、裁判所から捜査不十分という指摘を受けることも、おそらくなかったでしょう。
法律家にとって専門外の専門的な知識、実態が問題になる場合の、捜査、起訴の在り方に警鐘を鳴らす事件であったという印象を受けます。