物語 シンガポールの歴史 (中公新書)

物語 シンガポールの歴史 (中公新書)

物語 シンガポールの歴史 (中公新書)

シンガポールの通史を読んだことがなかったので、あまり長くなく、さくっと読めるものはないかと思っていたところ、これを見つけ、買って読みました。思わぬ拾い物(と言っては著者に失礼かもしれませんが)でしたね。
本書では、ラッフルズの上陸から、長く英国植民地であったシンガポールが、日本占領下を経て、マレーシアとの短期間の併合の末、マレーシアから放逐され独立国として歩みはじめ現在に至るまでの、約200年について、要領よく、かつ、表面的に終わるのではなく「なぜ、そうだったのか、そうなったのか」ということにできるだけ触れつつ、わかりやすく紹介していて、私の中で、今まで、断片的な情報からもやもやしていたものが、これを読みかなりクリアになったような気がしました。
よく、シンガポールにおける人民行動党下の抑圧的な、自由を制限する政治体制が批判され、著者も本書の中で批判的に紹介しているのですが、ただ単に批判で終わるのではなく、それが、シンガポールが国家としての生存を賭け、経済至上主義を命題としつつ、長く同国に君臨したリー・クアンユーの強烈な個性に強く影響される中で展開されてきたもので、従来は(最近は2011年の選挙で人民行動党が大きく批判を浴びるなど変化が起きつつあるようですが)、多くの国民にも「やむを得ない」という消極的賛成も含め支持されてきたものであることも、本書を読んでよく理解できました。
ガイドブックには飽き足らない、シンガポールという国のコアな部分に興味がある、といった人にはお勧めできる1冊です。私も、引き続きシンガポールについて勉強を重ねたいと考えています。他国を知ることは、自国の過去、現在、未来を考える上でも有益と感じています。