情報漏洩は懲役5年 金融庁、インサイダー罰則強化

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC21021_R20C13A3000000/

情報漏洩が罰せられるのは「インサイダー取引をさせる目的」があり、かつ漏洩した情報に基づいてインサイダー取引が成立した場合に限る。そうすることで、IR(投資家向け広報)など通常の経済活動に支障が出ないように配慮する。

こういった「目的」が犯罪成立要件になっているものを、目的犯、と言いますが、それが主観面のもの(行為者の内心のもの)であるだけに、犯罪立証上は厄介な問題になりやすいという性質を持っています。それと同時に、目的の有無は捜査を遂げてみなければ認定しにくい、ということにもなって、捜査機関等が、これはインサイダー取引につながった漏洩ではないか、とにらめば、対象者や所属組織は、従来の「参考人」という立場から一転して「被疑者」になるわけですから、ある日突然、捜索差押を受けたり、捜査機関からリークを受けるなどしたいい加減なマスコミに「情報漏洩か」などと書き立てられて顧客や市場の信頼を大きく損ねたり、といったことが、今後は簡単に起き得ることになるでしょうね。立件できない、とわかった上で、漏洩側を世間のさらしものにして大打撃を与えようと、そうした捜索等が行われることもあり得ます。
人は、経済活動を継続していれば、つい、不用意なことを言ってしまったりすることがあります。もちろん、そういうことはないようにすべきですが、今後は、そういった不用意な、しかしインサイダー取引をさせる目的などなかった行為が、その後のインサイダー取引につながった、ということで、目的があった行為ではないかと疑いをかけられ、状況によっては徹底的に追い込まれて行く、そういうことになってきた、という認識は、関係しそうな人や組織は持っておいたほうがよいでしょう。アベノミクス、などとはしゃいでいますが、そういう、人を、経済活動を萎縮させるようなことをやる意味や必要があるのか、私は疑問ですね。現行法でも、そうした行為がインサイダー取引の幇助犯になることを排除しているわけではないので、やるなら、その構成で対応できるでしょう。そういう立件例が極めて少ないのに、わざわざ目的犯のような立証しにくい構成要件にして、人を萎縮させるだけ、という、何だか間抜けな、間抜けているだけでなく危険な立法だな、と思います。