東京地検が不起訴処分にしたせいで再び横行? 新たなAndroid不正アプリ

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20130108_580992.html

このアプリはインストール時のパーミッション確認画面で、「連絡先データの読み取り」「携帯のステータスとIDの読み取り」など、類似機能の正規アプリでは通常は要求されるはずのない種類のパーミッションを要求してくるという。
これらを許可してしまいインストールすると、まず最初に「設定中 アプリの初期設定を行っています、しばらく待ちください...」と表示され、その後「お使いの端末ではご利用になれません。」と表示される。しかし、こうした表示の裏では、端末から収集した個人情報が外部サーバーに送信されているという。

シマンテックでは、同じように端末内の個人情報を裏で収集する不正アプリで警視庁が逮捕したグループについて、東京地検が証拠不十分で起訴を断念したことが、新たな不正アプリの出現の引き金になっている可能性も指摘する。
不起訴処分となったアプリの事案はいわゆる「○○ the Movie」系の不正アプリだ。Androidアプリのパーミッション画面を経ていれば、裏で個人情報を収集することにユーザーが同意したとみなされると言えるかどうかは議論の余地が大いにあるところだが、少なくともアプリの機能として動画を再生するような機能は備えていた模様だ。そのために、ユーザーの意図に反する動作をさせる「ウイルス」には当たらず、ウイルス作成・提供罪としての立件ができなかったのではないかと考えられる。

上記の、不起訴になった件については、先日、本ブログの

スマホ情報流出で逮捕の5人を釈放、東京地検
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20121121#1353466962

で、

上記の記事によると、ダウンロードの際に同意を求める画面が出ていた、という事情があるようですが、その点は、「意図に沿う」「意図に反する」ということを考える上で、意図に沿っていたのではないか、反していたとはいえないのではないか、という方向に働く要素でありつつも、アプリが、全体として「意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」ように作りこまれていて、同意画面も、利用者が錯誤、誤認に陥った状態で、真意に基づく同意が困難な状況で出される構造になっていて、アプリ作成、提供者側も、そうした事情を認識、認容しながら行為に及んでいる、といったことであれば、同意画面があって同意しているから不正指令電磁的記録ではない、とは言えず、それに該当する、犯罪が成立する、という認定は十分あり得ると思います。上記の記事にある、「動画再生ソフト」が、どういうソフトであったか、仔細はよくわかりませんが、動画再生ソフトを利用する上で、社会通念上、必要とは考えられない過剰な情報を吸い出す仕組みにしていて、その点について「過剰性」を説明しないまま利用者の錯誤、誤認に基づき同意を取り付けていた、といった事情があれば、不正指令電磁的記録に該当するという認定はあり得るでしょう。

とコメントしたことがあります。
法務省が指摘しているように、

核となるのは,そのプログラムが使用者の「意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」か否かである。

ということで、そういった評価は、あくまで規範的観点からなされるものですから、ウイルス罪の立法趣旨に沿って、法益保護という点を重視した上での評価が行われる必要があると思います。
東京地検の上記不起訴処分は、証拠を見ていないので評価に限界はありますが、同意、という点に引きずられ過ぎたのではないか、消極的過ぎたのではないか、という印象を受けますね。