警察取り調べマニュアル時代…人間関係から説く

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121213-00000616-yom-soci

ポイントは、取調室で取調官と向き合った時の容疑者らの心理状態。「相手(取調官)に良く思われたい」「大切な人を守りたい」「早く取り調べを終わらせたい」などと思うことで、自分に不利なことであっても虚偽の供述をする可能性が十分にあると指摘した。
虚偽供述を判別するサインとして一般的に「視線をそらす」「自分の体を触る」などのしぐさが挙げられていることについても、「誰にでも共通するサインは見いだされていない」として、型通りの対応を戒めている。
その上で、取り調べの心構えを説明。容疑者や事件の目撃者などが感じている取り調べへの不安が意思疎通を困難にするとして、「取調官と供述人」の関係から「個人と個人」の関係を築くことが、「取り調べの成否を決めるほど重要」だと強調した。

私も、今ではしがない弁護士ですが、若い頃は、新進気鋭(とまでいえるかどうか疑問ですが、少なくとも気分的には)の検事で、取調べも相当な数やっていましたから、取調べをいかに進めるか、特に、否認している被疑者からいかに供述を引き出すか、といったことについては、強い問題意識を持ち、資料を探して読んだりしていたものです。その際も、おそらく現在に至るまでも同様だと思いますが、取調べの「マニュアル」的なものは、実は皆無と言っても過言ではなく、検察庁内で配布されていた資料も、取調べの在り方について警察官が書いたもの(私が読んだその資料には、参考にできない、すべきでない部分もあるので要注意、という注意書きが入っていました)や、過去の事件の取調べの体験談(自慢話も含め)などを、抜粋して収録したようなもので、その程度の資料しかない、というのが実情だった、と言えるでしょう。
欧米、特に米国では、マニュアル好み、という国民性もあるのか、取調べのテクニックの研究、講習会、といったことが盛んと聞いており、例えば、日本で翻訳が出ている

自白―真実への尋問テクニック

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は、そうしたマニュアル的なものの集大成のような性質を持つ内容です。ただ、米国でも、こうしたテクニックについては、トリッキーな手法を推奨しているなどの批判も強くされてきた、という話を聞いたこともあり、現在、どういったステータスにあるのかは知りませんが、マニュアル的なものが独り歩きする弊害、といったこともあるのではないかという気はします。
日本での、従来の取調べに関して書かれたものは、誠心誠意臨み、人間関係を築き上げ、この取調官であれば真実を語りたい、語ろうという気になるような取調べを行う、そのためには日頃から勉強を重ね世の中や人間について知見を深め人間的にも自らを鍛えておく、といったものがほとんどであったと思います。上記の、警察のマニュアルも、記事を読む限り、その系譜に連なるもののようです。
ただ、そうした、従来型の取調べが、時代も変わり人の考え方も変わり、通用しなくなってきて真相解明機能を果たさなくなってきているのではないか、といったことにも、十分に目を向け考えるべきであり、こうしたマニュアルを否定するものではありませんが、蒸気機関車や自動車の時代に駕籠の担ぎ方や人力車の引き方を教えるような存在になるのではないか、という気もします。