実母及び実子2名を殺害し、その保険金を詐取したとして起訴された事案につき、被告人の自白の信用性を否定するなどして無罪とした第1審判決を維持した原判決が是認された事例

最高裁第一小法廷平成24年2月22日決定で、判例時報2155号119頁以下に掲載されていました。
決定を読んでみましたが、犯行を立証する証拠は自白程度しかないという証拠構造の下で、自白内容に不自然、不合理な点がある一方、自白の経緯において無理な取調べがあった形跡は特になく、自白後に捜査官以外に対して犯人性を自認する言動があるなど、検察官が、事実誤認を理由に上告したことにはそれなりに理解できるものもある事案ではありました。
最高裁は、犯人性についての疑いを示しつつも、原判決が重大な事実誤認をした疑いがあるとまでは認められないとして、上告を棄却しています。
事実認定の厳格化、といった流れの中に位置付けられる判例ではないか、と思われ、犯人性を疑わせる事情もあるだけに、事実認定ということを考える上で参考になるもの、という印象を受けました。