新サービスでヤフーが開けた 通信の秘密というパンドラの箱

http://diamond.jp/articles/-/21403
http://diamond.jp/articles/-/21403?page=2

このサービスは、ウェブ上のメールサービスを利用している会員に対してメールの中身を機械的に解析し、関心の高い広告を配信するものである。「インタレストマッチ広告」といい、旅行に関するメールが多ければ旅行の広告がウェブ上に表示される。広告効果も高く、大きな収益源になり得るのだ。
このサービスについて、複数の専門家は「通信の秘密の侵害になり得る」という“クロ”に近い判定を下す。
そもそも、電気通信事業法は、電子メールの内容に通信の秘密の保護を義務付けている。違反した場合は刑事罰が科されるほど重いものである。

従来の、通信の秘密に対する保護は手厚いものがあり「絶対不可侵」という性質を強く持っていますが、従来、観念されてきた通信は、電話等のリアルなもので、その侵害も、内容を他人が認識する、というものが想定されてきたと思います。
インターネットが発達し、メールのような「新たな通信」について、人が内容を認識するのではなく、上記の記事にあるような、ロボットが機械的にその内容を分析して利用者にマッチした広告を配信する資料にする、といった形態について、「秘密の侵害」と捉えるべきかどうか、かなり微妙さがあり、検討の余地はあるでしょう。従来、想定されてきた通信の秘密侵害とはかなり異なるものがある、ということは、実質的に検討される必要があると思います。
私自身の印象としては、直ちにクロとまでは言えず、グレーで、クロに入れるか、シロに含めるかは、通信へのこういったアクセスを違法と見るべきか、それだけの実質的な意味、価値があるものなのか、といった見地で決められるべきではないかと思います。適法と見る場合も、利用者の同意(私は、同意の内容が明確になっていれば事前の包括的な同意も許容されると考えています)は必須であり、また、分析結果により個人が特定されないことや取得した情報の利用が同意の範囲内に限定されることは必須でしょう。
一旦、歯止めが取れてしまった場合の悪影響への懸念もあり、慎重な検討が必要である、今後への影響が大きな論点です。