日本人はなぜ戦争へと向かったのか 戦中編 (NHKスペシャル)

NHKスペシャル 日本人はなぜ戦争へと向かったのか 戦中編

NHKスペシャル 日本人はなぜ戦争へと向かったのか 戦中編

買ってなかなか読めずにいて、ぽつりぽつりと読んでいるのですが、収録されている対談中、田中宏巳・防衛大学校名誉教授のもの(「泥縄式の戦争指導とふたつの軍隊」)が、陸軍、海軍という「ふたつの軍隊」が、相互に協調することなく勝手ばらばらに動いて国策を誤ったことで日本が敗戦へと落ちて行った状況を鮮やかに描き出しているように感じられ、秀逸だと思いました。
田中名誉教授の本は、振り返ってみると、実は、

山本五十六
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20110121#1295571561

を読んだことがあり、戦後、一部の作家等の影響もあって流布した「海軍善玉論」を冷静に批判する姿勢が印象に残っていましたが、上記の対談でも、国力の限界を顧みることなく陸軍の慎重論も押し切って戦線を無謀に拡大した海軍の戦略が的確に批判されていて参考になりました。
終戦といった大戦略ボトムアップではなくトップダウンで進められるべきであったが戦時中の日本ではそれができる人物がいなかった、平時の哲学と戦時の哲学は異なり戦時には勇断を持って決断を下せる人物が必要だが日本ではそういった危機に強いリーダーは出にくい、といった指摘は、今にも通じるものがあると感じました。田中名誉教授の対談だけでも読むことをお勧めします。