そのツイッターアカウント、誰のもの?米IT企業が元社員を提訴

http://p.tl/7Tyv

訴えによると、米カリフォルニア(California)州オークランド(Oakland)在住のノア・クラヴィッツ(Noah Kravitz)さんは2006〜10年、携帯端末関連ニュースサイトを運営する「フォーンドッグ(PhoneDog)」(本社:サウスカロライナ州)に製品レビューと動画担当のブロガーとして勤務していた。クラヴィッツさんが使っていた「@PhoneDog_Noah」というアカウントは約1万7000人にフォローされていた。
しかし、クラヴィッツさんは2010年10月に「突然会社を辞めた」。その際、会社側はアカウントを手離すよう求めたがクラヴィッツさんは拒否し、アカウント名を「@noahkravitz」に変更することにだけ応じたという。
クラヴィッツさんは現在ライバル会社「テクノバッファロー(TechnoBuffalo)」に勤めており、問題のツイッター・アカウントを「フォーンドッグの信用を落とすため」に使っていると会社側は主張。クラヴィッツさんに対し、フォロワー1人あたり2.5ドル(約195円)として算出した計34万ドル(約2650万円)、または退職後の8か月について月4万2500ドル(約330万円)の損害賠償を支払うよう求めている。

こういった紛争が日本で起きた場合、どういう切り口で解決するか、なかなか難しいものがありますが、1つの観点として考えられるのは、問題となっているアカウントが誰のものか、ということでしょうね。日本では、例えば、預金や所得等が誰に帰属するかを決めるに当たり、形式的にではなく実質的に決める傾向があります。アカウントについても、その実態に即し、実質的に見て、従業員ではなく所属する会社(組織)に属すると見るべき場合があるでしょう。その場合、従業員は、その会社(組織)に求められればアカウントを操作する権限を引き渡すべき法的義務を負うことになります。
それでは、アカウントは従業員に帰属する、と判断される場合、その従業員が会社(組織)から離れた後もアカウントの操作権限を行使し続けるような場合は、どういった解決が考えられるでしょうか。第一次的には、両者の間で、どういった権利義務関係にあったかどうかを探り、従業員に債務不履行責任が生じているかどうかということで見る必要があるのではないかと思います。そして、第二次的には、従業員が、在職中、所属する会社(組織)への所属自体やそれにより得た情報、与えられた便宜等々により形成したもの(顧客吸引力を含む)に、「フリーライド(ただ乗り)」しているかどうか、そういった行為が違法性まで帯びているかどうかを検討し、肯定されれば、不法行為責任が生じることもあり得るのではないかと思います。この点については、本件と事案は異なりますが、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20051012#p1

でコメントした読売新聞東京本社対デジタルアライアンス事件東京高裁判決で、フリーライドに違法性が認定され損害賠償(極めて低額なものでしたが)が認容されていることも参考になるように思われます。
この種の紛争を未然に防止するためには、アカウントを使用して情報発信するにあたり、アカウントの帰属を明確にしておき、また、従業員が退職するなどしてアカウントの継続使用が不適当となる(あくまで所属する組織から見て、ですが)場合に備え、権利、義務を予め明確化しておくことが必要ではないかと思います。