日本国憲法論

日本国憲法論 (法学叢書 7)

日本国憲法論 (法学叢書 7)

前の佐藤幸治憲法は青林書院から出ていましたが、この日本国憲法論は成文堂から発売され、成文堂のサイトで注文して、昨日、入手しました。佐藤幸治憲法も成文堂も、どちらにも、何とも言えない懐かしさを感じます。
私が早稲田大学法学部に入学し法律の勉強を始めたのは昭和58年(1983年)でしたが、その当時は、佐藤幸治憲法が出たばかりで、かなりの司法試験受験生がこれを買って読む、という状態になっていました。今でこそ憲法訴訟については様々な本で取り上げられていますが、当時は、まだ取り上げている本、特に受験生が基本書として使える本で取り上げているものが皆無という状態で、憲法訴訟について章を設け説明している佐藤幸治憲法に、受験生がわっと飛びついたという面があったと思います。ただ、いろいろな人が思い出として語っているように、限られた分量の中でより多くの情報を詰め込もうとしたせいか、表現が難解で、括弧書きの中に細かい字で参考情報が記載され読みにくく、読みにくさを我慢しながら読み進めることを強いられる本でもありました。
成文堂は、本店が早稲田大学正門前にあり、今でもそうですが、2階に法律専門書の売り場があって、私が入っていた緑法会というサークルの会員証を提示すると、生協の書店と同じく書籍が1割引きで買えたので(今でもそのようですが)、成文堂へ行って、よく法律書を買ったものでした。最近はほとんど行く機会がなくなりましたが、2階の、法律書が豊富に取り揃えられた売り場へ入って行く時の高揚感や、読もうと心に決めた法律書を買って手にして店を出て行く時のさらなる高揚感は今でも思い出すことができます。
最新刊の日本国憲法論を手にして、国民主権表現の自由など、いくつかの頭に浮かぶ点について書かれた箇所を読んでみましたが、縦書が横書になり情報量も増えたせいか(ページ数も増えているようです)、また、二色刷り、注記は下に別枠で表示といった工夫もあって、昔のような読みにくさは解消されているという印象を受けました。受験していた当時は、基本書として何度も繰り返し読み、択一試験前には試験対策で隅から隅まで精読していたたもので、読んでいると、昔の記憶が徐々に蘇ってきて、今とは違い希望を胸に新鮮な気持ちで法律を学んでいた頃の初心が蘇ってくるような気分になりました。
分量があり、今の司法試験受験生には敬遠されそうではありますが、敢えて基本書として選択し、旺盛な熱意、意欲を持ち、憲法という国の在り方、根幹に関わる基本法を堂々と学ぶ人々が出て、大震災、原発事故を抱え混迷する日本に一筋の光明を与える存在になってほしいと、切に願うばかりです。