http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100518-00000125-mai-soci
この中で、各社からは「『通信の秘密』や『表現の自由』との関係で検討すべき点が残っている」などと、法的な課題を指摘する意見も出たが、ブロッキングを実施するとの基本姿勢で各社が一致した。
事業者側の意見を受け、研究会はブロッキングについて「通信の秘密を侵害する行為である」としつつ、「削除や検挙などで対応できず、児童の権利侵害が著しい場合は違法性が取り除かれる」との見解をまとめた。また、対象となる児童ポルノサイトのアドレスリストについて「公平性、透明性が確保される基準によって、民間主導で適切に作成、管理する」とした。
ブロッキングとは、
児童ポルノのブロッキング、「緊急避難」として許容の余地?
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100331_358216.html
にあるように、
アクセスしようとしている先のホスト名やIPアドレス、URLなど通信内容の一部を、機械的とはいえ、加入者の同意なく検知して判定する仕組み。
を通じて通信を遮断するもので、正当行為、緊急避難として違法性が阻却されるかが検討されつつ、internetwatchの記事にあるように、
「ブロッキングは、適切な内容を含む通信全般を監視し、不適当な内容の通信を遮断するというものであり、事実上の私的検閲行為であり、その実施対象については、児童ポルノに限定し、他に拡大することがあってはならない」
といったことも議論されているようです。
緊急避難というのは、その要件から明らかであるように、他に手段がない、という場合の緊急手段ですから、それを理由にするブロッキングということを考えるとしても、許容される範囲はかなり狭い、と見るべきでしょう。
残るは正当行為としてどこまで許容されるかということですが、インターネット上のコンテンツとして閲覧の対象にすべきではない、少なくともそのように解する余地があるものは児童ポルノに限られず(例えば、爆弾の作り方とか人の殺し方といった情報を提供するサイト、著しい名誉毀損を垂れ流しているようなサイトなど)、そういった中で、なぜ、「児童ポルノに限定し、他に拡大することがあってはならない」などという、見方によっては恣意的なブロッキングが「正当」と評価されるのか、ということも問題にされなければならないでしょう。ブロッキングの対象を選定するにあたり、客観的な基準に基づき、児童ポルノに限らず、閲覧の対象にすべきでないものが謙抑的に選別される、その過程がきちんと整備されている、そういった一連の行為が、単にプロバイダー等の「寄り合い」程度で「自主的に」決められるのではなく法令による裏付けを伴っている、といったことがあって、はじめて、ぎりぎりのところで正当性が肯定されるということではないかと思います。
ただ、そういった道を開いてしまった場合、インターネット上の通信の中身に踏み込み選別して閲覧制限をかけたりかけなかったりするという、本来自由であるべき通信の根幹に関わる部分に手をつけてしまうことになるということも、やはり十分認識しておく必要はあるでしょう。