刑事証拠開示の理論と実務

刑事証拠開示の理論と実務

刑事証拠開示の理論と実務

刑事事件では、検察官が圧倒的に豊富な証拠を持っていますから、被告人、弁護人としては、検察官が持つ(必ずしも「手持ち」証拠に限られない、というのが最近の流れですが)証拠の開示を受け、検討したり証拠として提出することで、公判を有利に進めることができる場合が少なくありません。
公判前整理手続が導入され証拠開示に関する規定が整備されたことで、証拠開示の可能性は広がりました。ただ、様々な要件等があって、それらをどう解釈するか、どのように考えるべきかが既にいろいろと議論されていますが、本格的かつ詳細に論じたものがない状態であったと思います。その意味で、これは、待たれていた1冊と言えるでしょう。
ざっと見た印象としては、論点を網羅的に取り上げている上、裁判例も豊富に収録、紹介されていて、今後、証拠開示の問題を論じるにあたっては、この本に書いてある考え方に拠るかどうかはともかく、議論のベースにこの本を据えて積み上げて行く、という方法によったほうが効率が良く合理的でしょう。証拠開示の問題に関わる可能性がある人は手元に置いておくべき1冊ということになると思います。