拓銀元頭取らの実刑確定へ 最高裁、上告を棄却

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20091111AT1G1101Q11112009.html

同小法廷は決定理由で、企業が実質倒産状態でも、例外的に再建や整理などのために融資が許される場合があるとしつつ、「客観性のある再建・整理計画や銀行本体の強い経営体質など、融資判断に合理性が必要で、行内での明確な計画策定と正式な承認が欠かせない」との判断基準を初めて示した。

この種の融資について(特別)背任罪の成否が問題になると、必ずと言ってよいほど、融資しなければ融資先が破綻し既に融資した資金が回収できなくなるのでやむを得なかった、といった弁解が出るものですが、そういったケースについて、最高裁による基準が示されたことの意義は確かに大きいでしょうね。今後の同種事例の処理にあたり、参照されることが多くなりそうです。
本件について、「歴史に、もし、はない」とは言え、1審で執行猶予付きの有罪判決になっていれば、被告人、弁護人だけが控訴し、実刑判決が確定するということはなかった可能性があるでしょう。1審の裁判官は、一生懸命考えて無罪判決を出したはずですが、検察官控訴を招き、一種の反動がきて、高裁が強気に認定し実刑にしてしまい、そうなると、最高裁ではなかなか覆りにくく、結局、被告人にとっては酷な結果になったな、という印象を受けます。拓銀破綻へとつながった、その責任は重いとは思いますが、果たしてこの被告人達だけが悪かったのだろうか、といった、釈然としないものがどうしても残ってしまいます。

追記(平成22年5月4日):

判例時報2069号156頁

融資業務に際して要求される銀行取締役の注意義務の程度について、

一般の株式会社取締役の場合に比べ高い水準のものであると解され、所論がいう経営判断の原則が適用される余地はそれだけ限定的なものにとどまるといわざるを得ない。

とし、例外的に実質的倒産状態にある企業に対する支援策として無担保または不十分な担保で追加融資して再建または整理を目指すこと等があり得ても、これを適法とするためには、

客観性を持った再建・整理計画とこれを確実に実行する銀行本体の強い経営体質を必要とするなど、その融資判断が合理性のあるものでなければならず、手続的には銀行内部での明確な計画の策定とその正式な承認を欠かせない。

としている点に、特に先例としての価値があるという印象を受けました。今後、同種事案の参考とされることが多くなるでしょう。