押尾学被告の保釈決定 地裁が地検の準抗告棄却

http://www.asahi.com/national/update/0828/TKY200908280284.html

東京地裁は28日、弁護人の請求を受けて保釈を認める決定をした。東京地検がこの決定を不服として準抗告したが、同地裁は準抗告を棄却した。保釈保証金400万円がまだ納付されていないため、押尾被告は同日中に保釈されなかった。

結局、罪証隠滅の恐れがあり保釈を認めるべきではないかどうか、ということが問題になったはずですが、弁護人としては、当初、否認したとはいえ、現在は自白している上、必要な証拠は確保され罪証隠滅の恐れはない、と主張したものと思われます。
それに対し、東京地検としては、おそらく、

1 当初、犯行の核心部分である「違法薬物であることの認識」を否認していた
2 犯行直後に行動をともにしていた女性が死亡し、マネージャー等を呼び寄せ医療措置を講じるまで時間がかかるなど不明朗な行動をとっており、関係者と通謀するなどした罪証隠滅の恐れがある
3 本件と密接な関連がある余罪(保護責任者遺棄ないし保護責任者遺棄致死罪)が未解明であることも罪証隠滅のおそれにつながるものである

といったことを、保釈決定前から強く主張し、決定を不服として準抗告したものと思われますが、裁判所の認めるところにはならなかったということでしょう。
裁判所としては、本件は本件、余罪は余罪として、厳密に峻別した上で、本件(MDMAの使用)について、既に捜査機関が収集した証拠(自白や関係者の供述、裏付け証拠)に照らし、保釈を認めないほどの罪証隠滅の恐れは考えられない、と判断したはずであり、それだけ本件の証拠関係が強固なものである(有罪方向で)と見た、という評価も成り立つのではないかという気がします。
来週月曜日以降に保釈保証金が納付されるまでに、保護責任者遺棄(致死)罪で再逮捕、ということは、まずないと思いますが、検察庁が保釈に反対する姿勢が、裁判所には認められなかったとはいえ、かなり強いものであっただけに、このまま保釈されるのを指をくわえて見ているのかが、若干、気になるところではあります。

追記:

起訴後、早めの保釈を望むのであれば、起訴当日とかその翌日には、保釈請求書を裁判所に出しておくのが普通でしょうね。押尾被告人の場合、どういった事情があったのかはよくわかりませんが、起訴が24日月曜日で、保釈請求が出たのが翌々日の26日と報道されていて、ちょっと遅れました。地方の場合、保釈請求が出てから、裁判所が検察庁に意見を求め意見が戻ってくるまでの時間が短いですが、東京の場合、意見が戻ってくるまでに、保釈請求を出した日を含め、3日程度かかるのは普通なので、週の半ばに保釈請求をすると、決定は週明けということになることもあります。
検察庁が、保釈許可決定に対して抗告(準抗告)してくる可能性がある場合、保釈保証金は、決定後、速攻で納付しておく必要があります。抗告(準抗告)申立にあたっては、執行停止の申立もするのが普通で通常は認められ、保釈許可決定の効力は停止されますから、執行停止までに保釈保証金を納付しておかないと納付できなくなってしまいます。逆に、納付しておけば、夜中に抗告(準抗告)が棄却されても、既に納付しているので、棄却決定後、速やかに身柄が釈放されることになります。
裁判所の出納窓口は、午後4時くらいに閉まってしまうのが普通ですが、保釈許可決定が夕方に出そうな場合は、頼んでおけば、通常の取り扱い事件を延長して保釈保証金の納付を受け付けてくれるのが通常なので、そういう場合は、弁護人が速やかに動いて段取りをつけておくべきでしょう。そうしないと、保釈許可決定が出ても、出納窓口が閉まってしまい、翌日以降にならないと納付できないということになってしまいます。
押尾被告人の保釈について見ていると、やや段取りの悪さということを感じますね。